家庭医学館 「ぜんそく」の解説
ぜんそくきかんしぜんそく【ぜんそく(気管支ぜんそく) Asthma】
[どんな病気か]
ぜんそく(喘息)とは、気管支がけいれんしたり、分泌物(ぶんぴつぶつ)(たん)が増加したために、肺への空気の出入りが悪くなる病気です。そのため、苦しい息をするたびに、ゼーゼー、ヒューヒューといった音(喘鳴)がします(ぜんそく発作(ほっさ))。この症状は、治療によって、または自然によくなるのが特徴です。
また、ぜんそくの発作というより、せきだけがみられることもあります。これをせきぜんそく(咳喘息)といいます。
かぜにかかってから、せきが治まらない、そのうち喘鳴が聞こえるようになった、息苦しくなってきたというようなときは、ぜんそくが疑われます。
ぜんそくの症状は、夜、とくに明け方に悪くなります。大きな発作では、死亡することがあります。
治療が不十分な人では、仕事ができない、学校にも行けないということも少なくありません。
◎ぜんそく発作のおこるしくみ
[原因]
ぜんそくが発症するには、患者さんがアレルギー体質であることが重要な要因です。
ある種の物質(家のほこり、イエダニ、ネコの毛など)に対してアレルギーをおこしやすい、生まれつきの体質をアトピー体質といいます。
このアトピー体質に加え、生活環境の都市化によって増加したさまざまな原因物質によって、ぜんそくにかかる人が増えていると考えられています。
たとえば、アルミサッシによって室内の機密性が高まり、高温多湿になったことは、じゅうたん、ソファーなどの普及とあいまって、室内にすむダニの数を飛躍的に増加させる原因になりました。
アトピー素因のある患者さんが、ダニなどの原因物質(抗原(こうげん))を吸入すると、体内のリンパ球(リンパ細胞)がそれに結合して処理し、からだを守るために、抗体(こうたい)というものをつくります(免疫(めんえき)(「免疫のしくみとはたらき」))。
この抗体というのは、免疫グロブリンE(IgE)というたんぱく質でできており、つくられた抗体は、気管支の粘膜(ねんまく)にある肥満細胞(マスト細胞ともいう)と呼ばれる細胞表面の受容体に結合して、抗原が入ってくるのをまちます。
そして、抗原が入ってくると、抗体が抗原と結合し(抗原抗体反応(こうげんこうたいはんのう))、それによって肥満細胞がヒスタミンという化学物質などを放出します。
このヒスタミンなどが、気管支の筋肉(平滑筋(へいかつきん))を収縮させたり、分泌物を増加させたりするために気管支が狭くなります。
このようなメカニズムによって、せきが生じるわけですが、これまでは、このメカニズムが促進されることが、ぜんそくのおもな原因と考えられていました。
しかし最近になり、患者さんの気管支の粘膜には、好酸球(こうさんきゅう)やリンパ球など、それ自体が炎症をおこす細胞(炎症細胞(えんしょうさいぼう))が多数あり、それらが重要なはたらきをし、ぜんそくの慢性化に深くかかわっていることがわかってきました。
つまり、ぜんそくになる人は、その下地として、気管支に炎症があり、そのために外部の刺激(抗原)に対して過敏になっているというわけです。これを過敏性の亢進(こうしん)といいます。
とくに、おとなのぜんそくでは、原因とみなされる特定の抗原でなくても、刺激物質にさらされると、気管支の炎症が悪化し、ぜんそくも悪化することがわかっています。
◎アレルゲンの減少が治療の基本
[治療]
原因物質が明らかな場合は、それを遠ざけることが必要です。たとえばネコなどのペットです。しかし、多くの場合、原因物質をつきとめても、それから完全に逃れることは簡単ではありません。
このような場合には、少なくとも自宅内におけるイエダニを少なくする工夫が必要です(換気、除湿、カーペット類の除去、布団の乾燥など)。
治療は、まずしっかりと症状を抑えること(対症療法)が基本です。
まず、吸入気管支拡張薬が用いられますが、毎日、吸入をしなければならないほどの病状ならば、抗炎症薬(子ども)、ステロイド薬(おとな)が用いられます。
十分にステロイド薬を吸入すると、気管支拡張薬を使う回数は減ります。
この吸入ステロイド薬を中心にした療法は、各種の治療ガイドライン(治療手順)に取り入れられ、大きな成果をあげています。
アスピリンなどの解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)の一種や、食品に含まれる防腐剤、着色料などが、ぜんそくを急に悪化させることがあります。これをアスピリンぜんそくといいます。
過去に、かぜ薬や鎮痛薬を内服してひどい発作がおこったという人は、どんな病気で受診するときも、それを医者に告げることを忘れてはなりません。