元来は社会生物学の意であるから,最も広義には生物での社会関係一切の研究をさすことも可能であるが,通常は動物についていい,さらに,常に人間社会を念頭におくという含みをもつ。 E. O.ウィルソンの『ソシオバイオロジー-新たな総合』 Sociobiology: The New Synthesis (1975) 以来,にわかにこの語が用いられるようになった。ウィルソンはその後の著作『人生論』 On Human Nature (78) において,ソシオバイオロジーの定義として「人類も含めてあらゆる種類の生物におけるあらゆる形態の社会行動の生物学的基礎を科学的に研究すること」としており,同書の他の個所では,ソシオバイオロジーは複合的学問分野であって,行動学と生態学と遺伝学からの知識を合せ取入れて,社会全体の生物学的性質に関する一般原理を導き出そうとするものであると述べている。生物学の枠を越えて,社会をみる思想としても大いに注目を集めはじめているが,人類社会においても遺伝子に基づく先天的優劣の差別を重視するなど,生物学の原則を誤って適用するものであるとの批判も強い。