ヨーロッパ中央銀行制度(読み)ヨーロッパちゅうおうぎんこうせいど

百科事典マイペディア 「ヨーロッパ中央銀行制度」の意味・わかりやすい解説

ヨーロッパ中央銀行制度【ヨーロッパちゅうおうぎんこうせいど】

通称ESCB(European System of Central Banksの略)。ECB(ヨーロッパ中央銀行European Central Bank)は,1999年1月以降のヨーロッパ通貨統合後,単一通貨ユーロが導入されたユーロ地域の中央銀行。ESCBはECBとEUヨーロッパ連合)加盟各国中央銀行とで構成され,ECBの下に各国中央銀行が組織される。ユーロ地域全体にかかわる金融政策はESCBによって統一的に運営される。ECBの本部はドイツのフランクフルトに置かれ,初代総裁はオランダ中央銀行のドイセンベルクが就任。運営は役員会,政策委員会,一般委員会の3機関でなされ,最高意思決定機関は役員と加盟各国中央銀行総裁で構成される政策委員会である。ESCBの最優先課題は物価安定の維持とされ,その具体的業務は,(1)金融政策の策定と実施,(2)外国為替操作,(3)外貨の保有と運用,(4)各国中央銀行を結ぶ域内即時支払決済システムの運用などとされた。しかし現在の最大の課題は,単一通貨ユーロ自体の崩壊とEUの解体に繋がりかねない欧州債務問題の解決である。ユーロ加盟国の拡大とともに,経済発展の度合いの相違や異なる産業構造・市場構造を持つ加盟国が急増し,さらに1990年代後半から2000年代にかけて急展開したグローバリズムの影響も加わって,ユーロ以前にドイツのマルクフランスのフランのような強い通貨をもっていた国とギリシアのドラクマのように相対的に弱い通貨の国が単一通貨に統合されて運用されることから,後者に極端な信用バブルが生まれた。この信用バブルは各国に赤字国債の発行を容易にさせ実体経済とはかけ離れた投資を世界中から呼び込む結果をもたらし,さらに不動産バブル,証券バブルをふくらませることとなった。ユーロ参加の条件として参加国は財政中期計画(5ヵ年)を欧州委員会に提出し,財政赤字比率を単年度3%以下に抑えることなどが求められていたが,実際にはこの仕組みは機能せず,2008年に顕在化するギリシアの財政危機を皮切りに,ポルトガル,スペイン,イタリア,キプロスなど各国で金融・財政破綻を引き起こしEUそのものの存亡にかかわる深刻な問題に発展した。ヨーロッパ中央銀行は,IMF,EUとトロイカと呼ばれる協力体制のもとで各国の債務問題に対処している。→ソブリンリスクユーロ危機
→関連項目ヨーロッパ通貨機構

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世界大百科事典(旧版)内のヨーロッパ中央銀行制度の言及

【経済通貨同盟】より

…出資するのは,当初からEMUの第3段階に参加する11ヵ国の中央銀行のほか,デンマーク,ギリシア,スウェーデンおよびイギリスの各中央銀行。 1999年1月1日以降EMUの第3段階が開始されるとともに,ECBがEMU加盟国の中央銀行を統輔する形でヨーロッパ中央銀行制度European System of Central Banks(ESCB)が形成される。ECBはESCBの中核として,EMU域内における金融政策を一元的に実施することとなるが,政策決定はECBの役員に加えてEMU参加国中央銀行総裁から構成される政策委員会Governing Councilによってなされ,各中央銀行が金融政策実施の任に当たる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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