日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソロウーヒン」の意味・わかりやすい解説
ソロウーヒン
そろうーひん
Владимир Алексеевич Солоухин/Vladimir Alekseevich Solouhin
(1924―1997)
ロシアの詩人、小説家。1951年ゴーリキー文学大学を卒業後、詩人としてデビューした。そのテーマは第一詩集『広野の雨』(1953)以来、ロシアの自然と農民の生活に寄せる深い関心を基調にしている。幼年時代の思い出を織り交ぜながら現代の農村の風景をつづった『ウラジーミルの田舎(いなか)道』(1957)や『露のひとしずく』(1960)などの散文作品では、鋭い自然観察の目と民俗学的な関心をみごとに統一し、独自の叙情的世界を構築した。評論『ロシア美術館からの手紙』(1966)や『黒い板』(1969)、『掌(てのひら)の上の小石』(1977~84)、『石を集める時』(1980)では、ロシアの聖像画や民衆芸術を取り上げながら、西欧流の近代化を真っ向から否定し、19世紀スラブ派の思想を再評価するなど、古きよきロシアというイデオロギーを前面に押し出している。こうした作家の精神形成の過程は、第二次世界大戦後の学生生活を扱った自伝的な小説『ふきたんぽぽ』(1964)にもうかがえる。晩年は小説『左肩越しの笑い』(1989)や評論『レーニンを読みながら』(1989)で、左翼思想の限界をえぐり出しながら、ロシアが進むべき道をロシアの民族性のなかに求めようとした。
[浦 雅春]