日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソンミ事件」の意味・わかりやすい解説
ソンミ事件
そんみじけん
ベトナム戦争中の1968年3月16日、南ベトナムのクアンナム省チュライ米軍基地の西方わずか数マイルのソンミ(ミライ)村でアメリカ軍が起こした一般住民500人以上を大量虐殺した事件。事件は長く不問に付されていたが、19か月後の69年11月になって突然、アメリカ国内でも国際的にも衝撃的なニュースとして大騒ぎになり、その責任者としてウィリアム・カリー中尉が逮捕されて、71年4月有罪判決を受けたが、ニクソン大統領の命令により釈放された。この事件は孤立した事件ではなく、無数の類似の事件のなかからベトナムにおける米軍作戦を象徴する一事件として、当時のベトナム戦争反対のアメリカ内外の世論を一挙に高める役割を果たした。現実にはこの事件は、より大規模なバランアン事件(同じくチュライ基地近く)などとともに、米軍基地の安全を確保するために基地周辺を徹底的に掃討して「無人地帯」をつくりだすための必然的な作戦の一つにすぎなかったのである。
[陸井三郎]
『セイムア・ハーシュ著、小田実訳『ソンミ』(1970・草思社)』