日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイショウエビ」の意味・わかりやすい解説
タイショウエビ
たいしょうえび / 大正蝦
fleshy prawn
[学] Penaeus chinensis
節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目クルマエビ科に属するエビ。水産業上、重要な食用エビで、世界に分布するクルマエビ属28種のうちで漁獲量の多い5種に入る。体長は雄で20センチメートル、雌で27センチメートルに達する。黄海と渤海(ぼっかい)にのみ生息する狭分布性の種で、標準和名はコウライエビ(高麗蝦)である。商品名としてタイショウエビが名の通りがよいが、水産流通業界では、背から腹方にかかる帯状紋がないクルマエビ類をすべて「大正エビ」の名で販売しているので注意を要する。タイショウエビの名については、大正年間に黄海のトロールで漁獲されるようになったためと説明されることが多いが、異論もある。
生時は半透明の淡灰色で、微小な青灰色の斑点(はんてん)がある。尾扇(びせん)は赤褐色で、先端部が黒褐色。額角(がっかく)は上縁に7~9歯、下縁に3~5歯ある。尾節に棘(とげ)はない。春から夏にかけては渤海湾奥部の浅い泥底にすみ、7月を中心として産卵する。夏に孵化(ふか)した稚エビは、秋には20センチメートルほどに成長して沖合い回遊を始め、山東半島以南、済州島西方の深い所で越冬する。底引網で漁獲されるものは主としてこの越冬群である。4月ごろから沿岸回遊を始めるとともに急速に成熟し、湾奥部で放卵後に死ぬ。寿命は1年である。
[武田正倫]