タナグラ人形(読み)たなぐらにんぎょう(英語表記)Tanagra figurines

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タナグラ人形」の意味・わかりやすい解説

タナグラ人形
たなぐらにんぎょう
Tanagra figurines

古代ギリシアで制作されたテラコッタ彩色の小彫像。高さは6~7センチメートルから25センチメートルぐらいで、さまざまな姿態の優美な婦人像をはじめ、神々、騎士、楽人、職人、農夫など、紀元前5世紀からヘレニスティック期にかけて制作された。その多くは墓地副葬品神殿への奉納品とされるが、室内の置物死者生前の愛好品とされていた場合も少なくない。1870年代にボイオティアタナグラの墓地から多数発見されたためにこの名称でよばれているが、制作の中心地はむしろアッティカ地方の窯場とされている。

[前田正明]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タナグラ人形」の意味・わかりやすい解説

タナグラ人形
タナグラにんぎょう
Tanagra figurine

ギリシアの古典末期からヘレニズム期にかけて,アテネを中心にアッチカ,ボイオチア地方で制作されたテラコッタの小彫像。 1870年ボイオチアのタナグラの墓地で多数発見されたためこのような名称がある。神,美人,母子役者,農夫などの庶民生活の一端を自由に表現し,美しく彩色したこれらの小彫像は大彫刻とは違った魅力をもつ。用途も神への奉納品,副葬品,玩具,置物などとさまざまである。彩色は素焼したあと筆で描かれ,後期の像は型どりによるものが多い。

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