パイの一種。ふつう薄くのばした練り込みパイ生地を円形のタルト型に敷き,果物,カスタードクリーム,ジャムなどを詰めてオーブンで焼くか,生地だけを先に焼いてから材料を詰めたもので,とくに上にパイ生地をかぶせないものを指す。イギリスでは一般に浅いものはタルト,深いものはパイと区別し,上にもパイ生地をかぶせた平たい果物のパイをタルトと呼ぶこともある。フランスでは,フランという底のない型を用いることからフランflanと呼ぶことも多い。また型に敷いたパイ生地の上に,卵黄,生クリームのほかチーズ,ハム,エビ,カニなどを混ぜて詰め,表面をこんがりと焼いた料理のタルトもある。ふつう直径約20cmのタルト型を用い,直径5~7cmの小さな型で作ったものはタルトレットと呼んでいる。なお愛媛県松山市の名物にタルトと呼ばれる菓子がある。これはカステラの中に小豆あんを渦巻状に巻き込んだもので,南蛮菓子の系譜をひくものと思われる。
→パイ
執筆者:辻 静雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
洋菓子の一種。小麦粉とバターを混ぜ合わせた生地(きじ)をタルト皿に敷き、果物、ジャム、チョコレート、クリームなどの中身を詰めて焼く。先に生地だけを焼いて後から中身を詰めるのもある。普通8人前か10人前に切り分けて供するが、小形のものをとくにタルトレットtarteletteという。
愛媛県松山市のタルトは、ゆず餡(あん)をカステラで巻いた和洋折衷の生菓子で、松山名物である。1645年(正保2)に長崎探題となった松山藩主久松定行(ひさまつさだゆき)が、出島のオランダ商館で賞味したのがきっかけと伝えられる。その味が忘れられず、帰任後に城下の菓子屋に命じてつくらせた菓子というが、当時の松山のタルトはこし餡を軽羹(かるかん)で巻いた菓子とも伝えられており、南蛮菓子とはほど遠いものであった。一説では1787年(天明7)に松平定信(さだのぶ)が倹約令を発し、南蛮菓子製造を禁じたので、姿を変えて継承されたともいう。タルトがロールカステラ風になったのは現代のことである。
[沢 史生]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
… 練込みパイ生地の菓子には,円形のパイ皿に生地を敷き,果物を詰めて焼いたり,あるいはパイ皿に敷いた生地を先に焼いてから中にカスタードクリームなどを詰めたり,その上にさらに果物やナッツ類を飾ったものなどがある。このような上から生地をかぶせないパイは,タルトと呼ぶことが多い。タルトレットtarteletteはタルトの小型のもの,バルケットbarquetteは小さな舟型で焼くもの。…
※「タルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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