日本大百科全書(ニッポニカ) 「カステラ」の意味・わかりやすい解説
カステラ
かすてら
戦国時代、日本に輸入された南蛮(なんばん)菓子の一つ。1556年(弘治2)ポルトガルの宣教師が、長崎県の平戸(ひらど)に医療とともに伝えたといわれている。カステラの語源はポルトガル語のCastella、すなわちイベリア半島東岸中央から北部にかけての、かつてのカスティーリャ王国のことで、そこでつくられた菓子という意味であった。伝来当時は原料に牛乳や蜂蜜(はちみつ)が使われ、病人の治療用と思われていたが、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)ごろには一般に広まり始め、茶席の菓子にも用いられ大流行したということである。当時は小麦粉、鶏卵、白砂糖でつくられ、製法もいまほど複雑ではなかった。長崎の福砂(ふくさ)屋の創業は1624年(寛永1)で、続いて長崎屋、松翁軒、文明堂などが長崎にでき、やがて京坂地方から江戸にも広まっていった。長崎代官の村山等安(とうあん)をはじめ多くの人々の努力と研究の積み重ねと、400年にわたる長い時を経て、日本人独特の製菓感覚と技術が開発され、和菓子として今日のカステラが創造された。カステラの基本材料とその配合の割合は、小麦粉(薄力粉)50グラム、鶏卵100グラム、白砂糖100グラムである。小麦粉の量が少ないのでつくるのは非常にむずかしい。膨張剤を使用しないで、卵白の起泡を消さないように種生地(たねきじ)の中へ入れる。そして風味、湿性、焼き色などに気をつける。
[小林文子]