ダイアンサス(読み)だいあんさす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダイアンサス」の意味・わかりやすい解説

ダイアンサス
だいあんさす
[学] Dianthus

ナデシコ科(APG分類:ナデシコ科)ナデシコ属の総称。大部分が耐寒性多年草であるが、一年草もある。アジア、アメリカ、アフリカ北部、ヨーロッパに約300種あり、日本にはフジナデシコ(ハマナデシコ)、エゾカワラナデシコなど4、5種分布する。カーネーションもこの仲間である。茎は高さ約50センチメートルで数本立ちになることが多く、葉は対生する。花は頂生し、集散または円錐(えんすい)花序となる。萼(がく)は筒状で先端は5裂し、3対以上の小包葉がある。花期は普通は5~7月であるが、秋咲きや四季咲きもある。花弁は普通は5枚で、弁先に欠刻がある。雄しべは10本。花柱は2本。

 多くの園芸品種があり、おもなものはナデシコ、セキチク、アメリカナデシコ(ビジョナデシコ)などで、ほかにミカドナデシコ、大文字ナデシコなど多数の改良品種が育成されている。近年はファイアーストーム、マジックチャームなど一代雑種も多くつくられている。

 播種(はしゅ)から発芽までの環境の違いによって成長が大きく左右されるため、品種別に定められた播種適正期は正確に守ることが重要である。秋播(ま)きのものはなるべく早くする。ことにアメリカナデシコは8月下旬まで、大文字系は9月上旬まで(寒地それぞれさらに早く)とする。ただし、暑いときに播くので播種床は日よけをつくり、9月下旬~10月中旬には定植を終了させる。

[魚躬詔一 2021年1月21日]


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百科事典マイペディア 「ダイアンサス」の意味・わかりやすい解説

ダイアンサス

ナデシコ科の一属で,北半球に多く分布し,約300種ほど。大部分は多年草。茎に節があり葉は対生し披針形。花は頂生し単生か集散あるいは散形状の花序につく。昔から観賞用に栽培され,互いに交雑しやすいので多くの園芸種もできている。その園芸的に最も進んだ例はカーネーションである。 セキチクは中国原産の多年草で花壇鉢植によく使われる。花は単生か双生で径約3cm,色は赤,桃,白など。変化が生じやすく,日本,欧米で改良された種類も多い。イセナデシコは江戸時代に伊勢地方でセキチクから改良された種類で,切れ込みの深い花弁は長さが20cm余りになるものもある。鉢植用でさし芽,実生(みしょう)でふやす。トコナツも江戸時代から明治・大正にかけてセキチクから改良されたもので,八重咲もあり,四季咲性で鉢植用。タツタナデシコはオーストリア〜シベリア原産の多年草で,株立ちし数花を頂生する。花の中心に紫の斑紋がある。花壇・切花用。ヒゲナデシコはアメリカナデシコともいうが,ヨーロッパ原産。花は集散花序につく。切花・花壇用。ダイアンサス・ナッピー(和名ホタルナデシコ)は東欧原産で,本属には珍しく黄花だが,径1cmほどの小輪種。ダイアンサス・デルトイデス(和名ヒメナデシコ)はスコットランド,ノルウェー原産の草たけ20cm前後の矮(わい)性種。花壇,ロックガーデン向き。

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改訂新版 世界大百科事典 「ダイアンサス」の意味・わかりやすい解説

ダイアンサス
Dianthus

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世界大百科事典(旧版)内のダイアンサスの言及

【ナデシコ(撫子)】より

…7~11月,茎の先に径1.5cm前後の紫色をおびた桃色の花をかたまってつける。【三木 栄二】
[園芸種]
 ナデシコ属の植物は,赤色,桃色などの花もきれいなため,数十種が園芸植物として栽培され,ダイアンサスの総称名で呼ばれる。また種間の交雑が容易で,多くの雑種起源の園芸品種も育成され,八重咲きの品種も多く作出されている。…

※「ダイアンサス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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