ダーレム美術館(読み)だーれむびじゅつかん(英語表記)Dahlem-Museum

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダーレム美術館」の意味・わかりやすい解説

ダーレム美術館
だーれむびじゅつかん
Dahlem-Museum

ベルリンにある国立美術館。1945年、ベルリンの東西分裂後、西側に帰属したプロイセン文化財団の管轄作品を収容する、ダーレム地区にある美術館群の通称。かつては西ベルリン国立美術館ともよばれ、正式名称はStaatliche Museum, Preussischer Kulturbesitz, Berlin。絵画館、版画館、彫刻館、東アジア館、イスラム館、民族博物館からなり、前の3館は1910年代に民族博物館として建てられた建物に、あとの3館はこれに隣接して1970年に建てられた新しい建物に入っている。

 中心をなす絵画館の作品は、かつては東ベルリン所在の国立美術館(新・旧2館あり、旧館は1830年開設)やボーデ美術館(1904開設)などに展示されていた。プロイセン王家伝来の340点のコレクションを核とし、第二次世界大戦直前には2800点に達していた絵画作品は、400点が焼失、900点がソ連から東ベルリンに(1958以降)、残る1500点がアメリカから西ベルリンに(1957)、それぞれ接収ののち返還された。往時のコレクションは大戦によって二分されたわけだが、この絵画館には世界屈指といわれる質と量の、13~18世紀のヨーロッパ絵画の名品がそろっている。イタリア・ルネサンスの重要作品を含むほか、ファン・アイク、ロジェ・ファン・デル・ワイデン、デューラークラナハなど、北方系の作品にとくに優れている。

 版画館にはボッティチェッリの『神曲』や、デューラー、ホルバインレンブラントなどの素描や版画が、彫刻館にはイタリア・ルネサンスを中心とする作品が所蔵される。19、20世紀美術は、1968年にミース・ファン・デル・ローエの設計でティアガルテンに完成したナツィオナルガレリーに展示されており、ダーレムの絵画館、版画館、彫刻館もこの地に新築移転の計画が進められている。

[湊 典子]

 東西ドイツ統一後、ベルリンの国立博物館群は整理統合され、ダーレム美術館のヨーロッパ絵画はベルリン絵画館、旧国立美術館などへ、版画などは銅版画陳列館へ移された。2009年現在、ダーレム地区には、アジア美術館、民族博物館、ヨーロッパ諸文化博物館がある。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「ダーレム美術館」の意味・わかりやすい解説

ダーレム美術館 (ダーレムびじゅつかん)
Museen in Dahlem

第2次大戦後,東西ベルリンに分けられた国立博物館Staatliche Museenのうち西ベルリンにあるもの。ダーレム地区にあるため,この通称がある。絵画・彫刻各館,版画・素描室のほかインド,イスラム,東洋美術,民族学(アフリカ,アジア,オセアニア,古代アメリカ)などの諸部門を有す。中心となる絵画館は17世紀に収集を開始,フリードリヒ大王ら歴代のプロイセン国王により拡大,18世紀末には国民教育的見地から展示方法が体系化される。ナポレオン戦争後専門家の指導による本格的,組織的な収集が始まり,1830年新古典主義建築家K.F.シンケル設計の新しい建物(東ベルリン)で公開された時には,すでにドイツ有数の質と規模を誇っていた。収蔵範囲は中世からロココに至る欧州諸国の美術にわたるが,とくにファン・アイク,ファン・デル・ウェイデン,ファン・デル・フースらの15世紀フランドル絵画およびレンブラント,ルーベンス等の17世紀ネーデルラント絵画のコレクションが出色である。第2次大戦で400点以上を失ったが,現在残る作品の半数弱,約700点が公開されている。彫刻館はイタリア・ルネサンス期の名品で有名。東ベルリンのコレクションは,古代ギリシア・ローマ,オリエント,東アジアの美術を中心にしたペルガモン美術館ほかに収容されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダーレム美術館」の意味・わかりやすい解説

ダーレム美術館
ダーレムびじゅつかん
Museen Dahlem

ベルリン国立美術館に属する美術館の一つ。1962年開館。当初,絵画館を中心に,彫刻館,インド美術館(→インド美術),イスラム美術館(→イスラム美術),東アジア美術館,民族学博物館(→民族学)など八つの部門からなった。なかでも絵画館は,ジョット・ディ・ボンドーネの『聖母マリアの死』,ペトルス・クリストゥスの『若い婦人の肖像』などをはじめ,レンブラント・ファン・レイン,ペーテル・パウル・ルーベンスなどのコレクションで知られていた。1990年のドイツ統一後に美術館の再編・統合が行なわれ,民族学博物館,アジア美術館,ヨーロッパ文化博物館に再編された。

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