日本大百科全書(ニッポニカ) 「チブチャ文化」の意味・わかりやすい解説
チブチャ文化
ちぶちゃぶんか
Chibcha
南アメリカ北部、現コロンビアの首都があるボゴタ高原に栄えた古代文化。先行文化についてはほとんどなにもわかっていないが、16世紀初めスペイン人征服者が侵入したとき、ボゴタとトゥンハに大きな集落を発見し、そこに存在した建造物や黄金などについて記録を残している。チブチャ社会は、北アンデス、環カリブ海地域における最大の首長制社会であったが、ボゴタの大首長シパとトゥンハの大首長サケが二つの政治領域を統轄し、それぞれのもとに多くの小首長制社会を包含して、緩い政治的連合体を形成していた。首長、貴族、神官、平民、奴隷などからなる成層社会が存在し、太陽信仰が行われていたが、ボチカという文化英雄や、人身御供(ひとみごくう)の存在は、メソアメリカ文化との類似を示している。生産は、トウモロコシ、キヌア、ジャガイモなどの農耕を基礎にしていたが、交易も盛んに行っていた。物質文化に関しては、ボゴタ高原のラ・ラマーダや墳墓からの発掘品によって知ることができるが、石像、石彫類はきわめて少なく、茶、オレンジなど単色の土器、オレンジまたはクリーム地に赤彩の土器や、鋳型でつくった平板に針金状の輪郭を施した黄金製品などが特色である。チブチャの黄金製品は、スペイン人の略奪によって有名になったが、スタイルのうえからみると、キンバヤ、カリマなど隣接する地域の黄金細工との類似がみられない。
[増田義郎]