日本大百科全書(ニッポニカ) 「チブチャ」の意味・わかりやすい解説
チブチャ
ちぶちゃ
Chibcha
16世紀にスペイン人がアメリカ大陸に到達したとき、現在のエクアドルからニカラグアにかけて住んでいた人々。彼ら自身はムイスカと自称していた。とくに、コロンビアのボゴタを中心とした高原地帯に、インカに次いで中央集権化されたいくつかの首長国を形成し、二つの強力な首長国を中心に互いに戦争したり連合していた。首長は絶対的な権力をもち、数々の黄金製品を使っていた。土地は父系を通して相続されたが、首長職と神職は母系的に継承されていた。首長や神官は6年から12年間にわたる断食、隔離を含む訓練を必要とした。神殿、山、湖、洞穴などで食物、布、金、宝石が神に捧(ささ)げられ、太陽神に対して、また戦いの勝利を祈って奴隷や子供がいけにえにされた。経済的にはトウモロコシ、ジャガイモなどを主作物とする農耕を基盤としていた。土器作り、織物などの技術は周辺の諸集団に比べてそれほど発達していなかったが、チブチャ人を有名にしたのは彼らの金細工であり、砂金からさまざまな金製品をつくっていた。とくにグァタビータの首長国では、首長が全身に金粉をまぶして湖に入る儀礼があり、このうわさが、エル・ドラド(黄金郷)を探し求めるスペインの征服者たちをひきつけ、1537年にヒメネス・デ・ケサーダの一隊によってボゴタのチブチャ首長国は征服された。18世紀にはチブチャ語も消滅した。
[板橋作美]