チベット高気圧(読み)ちべっとこうきあつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チベット高気圧」の意味・わかりやすい解説

チベット高気圧
ちべっとこうきあつ

チベット上空に形成される高気圧。アジア大陸南部の北緯20度から30度の緯度帯では、中国南部からインドを経て中近東・北アフリカ方面に至るまで、その対流圏上部(8~15キロメートル上空)では、冬は偏西風、夏は偏東風が卓越し、風向の季節変化がきわめて著しい。これは冬に北緯10度付近の上空に東西に伸びている上空の高圧帯が、夏は北緯30~35度まで変位することに対応している。この夏の高圧帯の中心の一つがチベット・ヒマラヤ山塊の上空にあり、高気圧の示度も、ここでもっとも高くなっている。これをチベット(上空)高気圧という。この季節変化は、自由大気中に突出する大山塊が冬は冷源、夏は熱源となるためにおこるもので、日本の梅雨をはじめとして、東アジア、南アジアの夏の季節風に関連する各地の天候の年々の特徴は、その年のチベット高気圧動静によって説明されることが多い。

[倉嶋 厚]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チベット高気圧」の意味・わかりやすい解説

チベット高気圧
チベットこうきあつ

夏季チベット高原の上空の対流圏上部に発生する高気圧。ヒマラヤ山塊を含むインド内陸部は夏に日射降水に伴う潜熱の解放によって空気が加熱され,広い範囲にわたって上昇気流が発生する。大気下層は低気圧になり,インド洋から内陸部に向けて夏の季節風(インド・モンスーン)が吹く。上昇した空気は対流圏上部で四方に吹き出すが,吹き出す空気にコリオリの力が働いて時計回りの大気の循環(高気圧性の渦巻)ができる。これをチベット高気圧と呼ぶ。チベット高気圧が発達すると,ヒマラヤの南側を吹いていた偏西風が北側に移る。これに呼応して日本付近の季節が梅雨から盛夏に移行する。

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