コリオリの力(読み)こりおりのちから

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コリオリの力」の意味・わかりやすい解説

コリオリの力
こりおりのちから

回転座標系に見かけのうえで発生する慣性力のこと。たとえば、角速度ωで回転する円板上に、中心から円板の縁に向かって速度v物体質量mとする)を投げると、この物体には進行左側から右側に
  f=2mωv
の大きさの力が働く。これは、1828年フランスのコリオリが理論的に導いたので、コリオリの力とよばれる。一般に、回転中心を基準として回転面内の位置ベクトルrとし、その成分をxyとすると、コリオリの力fは、回転面に平行

と書ける。

 したがって、dr/dtf内積をつくると

であり、これはゼロになるから、コリオリの力は物体の速度と垂直な方向から働く。コリオリの力はまた回転軸とも垂直になっている。コリオリの力の効果は、広域気象現象、大陸間弾道ミサイルの弾道計算などに重要である。台風が北半球では左巻き、南半球では右巻きになるのも、コリオリの力の影響である。

[大槻義彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コリオリの力」の意味・わかりやすい解説

コリオリの力
コリオリのちから
Coriolis force

回転座標系において運動物体にだけ働く見かけの力 (→慣性力 ) 。 G.コリオリが 1828年に見出した。角速度ωの回転系では,速さ v で動く質量 m の物体に関し,コリオリの力は大きさ 2mωv sin θ で,方向は回転軸と速度ベクトルに垂直である。 θ は回転軸と速度ベクトルのなす角である。なめらかな回転板の上を転がる玉が外から見て直進するならば,板上に乗って見れば回転方向と逆回りに渦巻き運動する。これは板とともに回転する座標系ではコリオリの力が働くためである。地球自転する回転座標系であるから,時速 250kmで緯度線に沿って西から東へ進む列車には重力の約1/1000の大きさで南へ斜め上向きのコリオリの力が働く。小規模の運動であればコリオリの力は小さいが,長時間にわたり積重なるとその効果が現れる。北半球では,台風の渦が上から見て反時計回りであり,どの大洋でも暖流黒潮と同じ向きに回るのはコリオリの力の効果である (南半球では逆回り) 。 1815年 J.- B. -L.フーコーパリにおいて,長い振り子 (→フーコーの振り子 ) の振動面がコリオリの力によって東,南,西,北の順にゆっくり回転することを実験して,地球の自転を実証した。これをフーコーの実験という。南半球では振動面の回転の向きが逆となる。

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