フランスの機械学者。「コリオリの力」で有名。パリに生まれ、1808年エコール・ポリテクニク(理工科大学校)に入学。卒業後、エコール・ド・ポン・エ・ショッセ(土木工科大学)で研究を続け、1816年にエコール・ポリテクニクの解析学・機械学助教授となり、1838年に研究主任となるまで教授を務めた。1836年科学アカデミー会員となった。理論力学が機械の働きについての一般理論でなければならないと考え、1829年『機械の効果の計算について』を出版し、新しい用語法と理論的方法を提出した。とくに、仕事の概念を用いて、活力(運動エネルギー)について1/2mv2という定式化を行った。また、力の合力がゼロであれば、仕事の値は座標系によらないことを示した。その後、動力機械を評価するために座標系の変更による慣性力の考察へと進んだが、とくに回転座標系で現れる「コリオリの力」は地球物理学や弾道学などにとって重要な業績である。
[高田紀代志 2018年7月20日]
フランスの工学者,物理学者。プロバンスの古い家系の出で,パリに生まれエコール・ポリテクニクに学んだ。初め工兵隊に勤務したが病弱でもあり,A.L.コーシーの推薦によりエコール・ポリテクニクの講師となり,次いで中央工芸学校,土木工学校の教授を務めた。著書《機械の効率の計算》(1829)にも見られるように,機械の働きの研究を追求して理論力学の整備,力学の基礎原理の検討を行い,仕事の概念を確立,また運動エネルギーに係数1/2を付した正しい表現を与えた。さらに複合系の力学を扱い,座標系の選び方による力学系の変化の検討,相対運動の取扱いなどに業績を残した。回転座標系であらわれるコリオリの力は有名である。
執筆者:藤村 淳
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… エネルギーという言葉は,ギリシア語energeia(接頭語en=内部に+ergon=仕事)に由来し,〈物体内部に蓄えられた仕事をする能力〉という意味で,T.ヤングがそれまでの“活力”に代わるものとして用いた(1807)が,1850年代初期にW.J.M.ランキンやW.トムソン(ケルビン)らがこの語を意図的に再使用し始めるまでは一般には使われなかった(英語ではforce,ドイツ語ではKraftなどがそれに当てられていた)。“仕事”を現在の意味(力×移動距離)に定義し,活力の代りに運動エネルギーT=1/2mv2を用いて,その変化高⊿Tと物体に働く力のする仕事Wの関係を⊿T=Wの形に与えたのは,G.G.コリオリである(1829)。物体に働く力が重力の場合,そのする仕事には次の特徴がある。…
…この仮想的な力(慣性力)を遠心力と呼び,円の中心と反対向きでmω2rの大きさを持つことになる。回転座標系上で静止している質点をそれに固定した座標系からみる場合には,見かけの力として遠心力だけを考えればよいが,回転座標系上で運動している質点に対しては,理論上さらにもう一つの見かけの力を考える必要があり,この力を研究したフランスの物理学者G.G.コリオリにちなみコリオリの力と呼んでいる。このように見かけの力として遠心力やコリオリの力を導入すると,回転系を慣性系のように取り扱うことができ非常に便利である。…
※「コリオリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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