イギリスの詩人。ブリストル市教会堂の書記の子に生まれたが,幼少年期から文才をあらわし,古詩の文体を模倣することにきわめて巧みであった。彼の運命を狂わせたのは,彼が13世紀の古詩と称してそれらしくでっちあげた作品に,土地の好事家や郷土史家たちがまんまとだまされ,買い上げてくれたからである。それ以後,彼は自己の天才を自分の作品に注ぐことを忘れ,手っとり早く金になる模作にはげんだ。彼がそれらしく書いた古詩や古文書類はつぎつぎに買い上げられたし,15世紀の詩人ローリーThomas Rowley作と銘打った作品は,衝撃的な発見としてセンセーションを巻き起こした。やがてある言語学者の綿密な分析によって,これら全部が偽作であることが暴露され,17歳の天才少年は極貧のうちに服毒自殺をとげる。しかしこのようにして引き起こされた中世の文物への新しい興味は,やがて来るべきロマン主義の精神と共通するものをひそめていたというべきであろう。
執筆者:川崎 寿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
イギリスの詩人。父親の家系には代々教会の寺男が多く、早くから教会の古文書に親しみ、16歳のころ中世風のつづり、用語、文体、文字を駆使して、架空の詩人ローリーRowley名の詩を仕上げた。やがてロンドンに出たが生活に行き詰まり、18歳たらずで砒素(ひそ)をあおって死ぬ。彼の早熟な才能の開花と悲惨な結末が次代のロマン派詩人の想像力をかき立てた。『ローリー詩集』が死後刊行(1777)された。
[早乙女忠]
…ほかに,文学上の要請により原著者がわざと虚構の作者を設定する例がある。有名な偽作家を挙げれば,15世紀の修道士ローリーT.Rowleyの作として多数の詩を偽作したチャタートン,古代ギリシア詩の翻訳と称する偽作《ビリティスの歌》を発表したP.ルイスなどがいる。またシェークスピアの戯曲はF.ベーコンが名を秘して書いた偽作だという〈シェークスピア=ベーコン説〉が18世紀以来根強く主張されている。…
※「チャタートン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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