日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャップリンの独裁者」の意味・わかりやすい解説
チャップリンの独裁者
ちゃっぷりんのどくさいしゃ
The Great Dictator
アメリカ映画。監督チャールズ・チャップリン。1940年作品。チャップリンの映画監督作品のなかで、もっとも政治色が前面に押し出された作品。1930年代なかば、国際的ファシズムが台頭し、1941年にアメリカが第二次世界大戦に参戦すると、ハリウッド映画市場でも戦争関連作品がブームとなり、本作も同年のアメリカ国内興行成績のベスト10入りした。当時、ハリウッド映画作品は、まだドイツやイタリアにも輸出されていたが、チャップリンは本作で、ユダヤ系理髪師とナチスドイツのヒトラーを想起させる独裁者の一人二役を演じ、ファシズムを滑稽(こっけい)かつ痛烈に風刺してみせている。チャップリン作品で初のトーキー映画。また本作以降トレードマークである浮浪者衣装はみられなくなる。このトーキー導入以降、チャップリンが監督する作品は減少し、俳優としてのみの出演が増えていく。1960年(昭和35)日本公開。
[堤龍一郎]