ゲッベルス(読み)げっべるす(英語表記)Joseph Goebbels

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲッベルス」の意味・わかりやすい解説

ゲッベルス
げっべるす
Joseph Goebbels
(1897―1945)

ナチス・ドイツの政治家。小市民出身で、初め作家を志したが挫折(ざせつ)した。1922年ナチス党に入ったが、1923年のヒトラー一揆(いっき)には参加せず、1925年ナチス党が再建されると、シュトラッサー兄弟の下で機関紙『国民社会主義書簡』を編集した。1926年ヒトラーにみいだされてベルリン管区指導者になり、1927~1934年週刊紙(1930年以後日刊紙)『攻撃』の編集長として反ユダヤ主義をあおり、ワイマール共和国を愚弄(ぐろう)した。1928年国会議員にも選出された。1929年ナチス党の全国宣伝部長。1933年ヒトラー内閣が成立すると、新設啓蒙(けいもう)宣伝相となり、放送、新聞、映画、演劇、音楽などの報道、文化活動を統制し、大衆の思考と感情を思うがままに操った。彼の宣伝の最高傑作の一つは、スターリングラード(現ボルゴグラード)での敗北後の1943年2月18日の演説で、敗北の事実を率直に認め、ボリシェビズム脅威をあおりつつ国民を総力戦に動員することに成功した。1945年4月29日ヒトラーは「遺言」で彼を首相に任命したが、ヒトラーの後を追い、妻と6人の子供を道連れに自殺した。

[吉田輝夫]

『西城信訳『ゲッベルスの日記』(1974・番町書房)』『マンヴェル、フレンケル著、樽井近義・佐原進訳『第三帝国と宣伝――ゲッベルスの生涯』(1962・東京創元新社)』『クルト・リース著、西城信訳『ゲッベルス』(1971・図書出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲッベルス」の意味・わかりやすい解説

ゲッベルス
Goebbels, Paul Joseph

[生]1897.10.29. ラインラント,ライト
[没]1945.5.1. ベルリン
ナチス・ドイツの宣伝相。織物工場の職工長の家に育ち,事務所の給仕をするなど不遇な少年時代を過し,また小児麻痺のため下肢が不自由になり,兵役を拒否された。カトリック財団の奨学金を得て,ボン,ハイデルベルク大学などに学び,1922年ドイツ哲学の研究で博士号を得た。 25年にナチス党左派指導者 G.シュトラッサー秘書となり,26年入党,ルール地区の指導者となった。シュトラッサーと A.ヒトラーとの対立が深まるとともに,同年末にはヒトラーに忠誠を誓うようになり,ベルリン地方の党指導者に任命され,シュトラッサーから離れた。 28年国会議員,29年党宣伝部長として,新しい宣伝手段を駆使し,巧みなデマゴギー (→デマゴーグ ) を使い,30年代の党勢拡大に大きく寄与した。 33年にナチスが政権をとると,国民啓発宣伝相,文化院総裁として文化面を完全に統制し,国民を戦争に動員した。最後までヒトラーに忠実で,彼が自殺した翌日,首相官邸の地下壕で妻子とともに自殺した。

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