工学分野の研究者に贈られる世界的に権威のある賞の一つ。アメリカの民間非営利研究機関である全米工学アカデミーUnited States National Academy of Engineering(NAE)が1988年に創設した。実用的な技術の進歩や社会の発展に貢献した研究者を毎年表彰しており、受賞者には副賞として50万ドルが贈られる。同じく全米技術アカデミーが選考しているバーナード・ゴードン賞とフリッツ・アンド・ドロレス・ラス賞の3賞をあわせ、「工学のノーベル賞」ともよばれている。賞の名称は、アメリカの科学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)教授であったチャールズ・スターク・ドレーパー(1901―1987)にちなむ。ドレーパーは、NASA(ナサ)でアポロ宇宙船の誘導コンピュータ製作を指揮し、月面着陸を可能にしたことで知られる人物である。
これまでのおもな受賞者は、以下の通り。集積回路を発明して1989年に受賞したキルビーとノイスRobert Norton Noyce(1927―1990)、全地球測位システム(GPS)を実用化して2003年に受賞したゲッティングIvan A. Getting(1912―2003)とパーキンソンBradford W. Parkinson(1935― )、世界初のネットワーク型コンピュータを開発して2004年に受賞したアラン・ケイAlan Kay(1940― )ほか3名、WWW(World Wide Web)を提唱・開発して2007年に受賞したティム・バーナーズ・リーTim Berners-Lee(1955― )など。
日本人研究者として初めての受賞者は金沢工業大学名誉教授の奥村善久(おくむらよしひさ)(1926―2023)で、クーパーMartin Cooper(1928― )、エンゲルJoel S. Engel(1936― )、フレンキールRichard H. Frenkiel(1943― )、ホーグThomas Haug(1927― )の4人の研究者とともに2013年に表彰された。この受賞は、世界初の携帯電話ネットワーク、システムおよび標準規格に対する先駆的貢献が認められたものである。この技術は、地形条件によって異なる電波の伝わり方を体系化し、携帯電話基地局などを配置するうえで不可欠な技術として、世界中の通信網構築に活用されている。
[編集部 2015年9月15日]
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