日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウカ」の意味・わかりやすい解説
チョウカ
ちょうか / 蝶蚊
moth fly
昆虫綱双翅(そうし)目糸角亜目チョウカ科Psychodidaeの昆虫の総称。小形で体長1~4ミリメートル。体のわりにはねが幅広くて大きく、鱗粉(りんぷん)状の長毛を密生し、チョウやガのはねを思わせる。そのため、かつてはチョウバエともよばれた。触角は比較的短いが、多節構造である。触鬚(しょくしゅ)は3、4節よりなる。静止時にははねを屋根形にして止まり、移動するときにははねをぴくぴく飛ぶように動かして歩く。成虫は便所、風呂(ふろ)場の壁、窓ガラスによくみられる。幼虫は頭部と口器が完全に発達しており、ハエのウジのように退化してはいない。尾端には、先端に毛の縁どりをもつ呼吸管を備える。下水溝、浄化槽などの汚泥中で発育する。成虫はときに大量発生し、不快害虫化する。
ホシチョウカPsychoda alternataは、体長1、2ミリメートルでもっとも普通種。はねが淡黒色で翅縁に白黒交互の斑点(はんてん)を配列している。オオチョウカTelmatoscopus albipunctatusは、体長約4ミリメートル。大形の暗色のはねには翅縁に8個の白毛斑をもつ。サシチョウカはサシチョウバエ、サンドフライともよばれ、砂漠地帯でレイスマニア症を媒介する重要な衛生害虫である。これまでチョウカ科の1亜科に含められてきたが、現在は独立のサシチョウカ科Phlebotomidaeとして分類されている。大陸の熱帯から温帯にまで分布し、幼虫は砂地に水から離れて生活している。発育はゆっくりで、動植物質や動物の糞(ふん)を食している。成虫は花蜜(かみつ)を吸うほか、雌は卵形成のための栄養源として動物やヒトから吸血する。
[倉橋 弘]