改訂新版 世界大百科事典 「チョウバエ」の意味・わかりやすい解説
チョウバエ (蝶蠅)
moth fly
双翅目チョウバエ科Psychodidaeに属する昆虫の総称。和名は明治のころの学者がドイツ語のSchmetterlingsmückenを訳したもので,英名とともに翅に鱗翅目昆虫(チョウ,ガ)のような鱗毛をもつハエの意味である。分類学上はハエよりもカに近縁で,日本からは約60種が記録されている。成虫の体長は1~5mm,小型のものが多く,翅には黒色または灰褐色の斑紋をもち,静止するときには翅を屋根型にたたむ。幼虫は水生または陸生で,水中では腐敗した植物や藻類を食べる。陸生のものでは腐植質のほか,キノコに寄生するもの,動物糞を食べるものなどがある。ホシチョウバエPsychoda alternataは,世界共通種で家屋の内外にもっともふつうに見られる。下水溝や汚水処理場の活性汚泥から大発生することで有名である。成虫がガラス窓や障子の上をくるくるとまわっているのをよく見かける。オオチョウバエTelmatoscopus albipunctatusは秋から冬にかけて便所の壁などに多数見られる。大型種で体長4~5mm,幼虫は下水溝などから発生する。雌は一生に約100卵を産む。卵が孵化(ふか)してから成虫になるまでは約2週間,羽化後4~5日後には産卵を開始する。成虫は約1ヵ月生存する。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報