日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツェッペリン」の意味・わかりやすい解説
ツェッペリン
つぇっぺりん
Graf Ferdinand von Zeppelin
(1838―1917)
硬式飛行船の発明者。ドイツ、バーデンのコンスタンツに生まれる。士官学校を卒業し陸軍将校となったのち、チュービンゲン工科大学に学んだ。1891年中将で退役すると、私財を投じて、アルミニウム合金骨格へ布を張った外殻で空気抵抗を受け、浮力を内蔵ガス袋によって得る、高速航行が可能な硬式飛行船の開発に着手した。LZ1型は長さ128メートル、直径12メートル、ガス容積1万1300立方メートル、12馬力エンジンの双発で、1900年62歳のツェッペリンが自ら船長として飛行した。その後大型化し、1910年から1914年までに、5隻の飛行船は延べ3万5000人の乗客を無事故で国内輸送した。第一次世界大戦にはドイツ海軍によって艦隊偵察やロンドンなどの爆撃に使われたが、迎撃よりも暴風などによる被害が多かった。大戦後アメリカ海軍が不燃性のヘリウムガスを用いた飛行船を採用したが、気象災害によってほとんどが喪失された。ドイツではその後も輸送に使われたが、1937年5月、LZ129型「ヒンデンブルク号」が大西洋定期横断航路を飛行してアメリカのレークハーストに着陸する際に炎上したことで、飛行船は世界の空から消えた。しかし、ツェッペリンの構想が新しく生かされ、運輸機関として復活する可能性も十分考えられる。
[佐貫亦男]