ツェッペリンによってつくられた硬式飛行船。ツェッペリン飛行船設計の偉大さは,浮揚用水素ガス袋と,空気力を受けもつ船体とを分離した点にある。それまでの軟式飛行船は,ガス袋そのものを船体としていたため,変形しやすく高速航行は不可能であった。ツェッペリンはアルミニウム合金の多角形の横材と縦通材で骨格をつくり,張線で補強し,その上へ羽布(麻または綿布)を張って流線形の船体を構成し,ガス袋は横材間に収めた。このような構造をもつ飛行船(硬式飛行船)は船体の外形を保持することができ,飛行機よりは遅いが,駆逐艦でも追尾不可能な高速を発揮,飛行船は実用的な空の輸送手段となった。ツェッペリン飛行船の優れたもう一つの点は,大型化を可能にしたことである。飛行機と違って,浮揚力は寸法の3乗である体積に比例し,構造重量は寸法の3乗以下にとどめられるから,大型ほど有用荷重を搭載できる。
ツェッペリン飛行船の第1号は1900年のLZ1であり,09年にはツェッペリン飛行船による航空輸送会社も設立された。第1次世界大戦中には119隻建造されて偵察,爆撃などに用いられ,行動中に撃墜されたものもあるが,それ以上が悪天候で難破した。戦後の28年ツェッペリン飛行船会社はLZ127ツェッペリン伯号を建造し,東京経由で世界一周に成功した。しかし,次のLZ129ヒンデンブルク号は37年大西洋横断後にアメリカのレークハースト着陸の際炎上,またアメリカ海軍はドイツ海軍の方針を継いでツェッペリン型飛行船を採用(ただし浮揚ガスには不燃性のヘリウムガスを使用)したが,ほとんどが荒天で難破,これらの大事故は飛行船の利用に事実上の終止符を打った。
→飛行船
執筆者:佐貫 亦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし初期のものは大馬力の動力装置を積む余力がないためスピードが遅く,少し風があると航行困難になった。20世紀に入って,ドイツのF.ツェッペリンの硬式飛行船が出現するにおよんで,その性能は飛躍的に向上し,1910年からは,20~25人乗りのツェッペリン飛行船により,ドイツ国内の各都市を結ぶ世界最初の有償航空旅客輸送が始められた。この運航は第1次世界大戦の始まる14年まで続き,3万4000人を運んだ。…
※「ツェッペリン飛行船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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