ツキノワグマ(読み)つきのわぐま(英語表記)Himalayan black bear

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツキノワグマ」の意味・わかりやすい解説

ツキノワグマ
つきのわぐま / 月輪熊
Himalayan black bear
Asiatic black bear
[学] Selenarctos thibetanus

哺乳(ほにゅう)綱食肉目クマ科の動物。アジアクロクマ、ヒマラヤグマの名もある。アフガニスタンイランからアムール川以南のアジア大陸東部、海南島、台湾、日本まで東アジアに広く分布する。頭胴長1.9メートル、最大体重は雄で210キログラム、雌で170キログラムの記録がある。毛は黒く、普通、前胸に三日月状の白斑(はくはん)、いわゆるツキノワ月輪)があるが、地域によってはこの白斑をもたないものがある。

 日本のものはこの1亜種ニホンツキノワグマS. t. japonicusとよばれ、本州、四国に分布するが、九州では絶滅したものとみなされている。西日本での分布域の減少が著しい。

 春はフキスゲなどの草本、タケノコ、秋はミズナラミズキヤマブドウなどの樹木の実を主として食べるほか、アリやハチも好む。樹洞や岩穴などに入って冬ごもりし、この間、雌は1~2子を産む。春先、冬ごもり穴から出てきたクマは、越冬前に比べ体重が約20%も減少している。

[渡辺弘之]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツキノワグマ」の意味・わかりやすい解説

ツキノワグマ
Selenarctos thibetanus; Asian black bear; Himalayan black bear

食肉目クマ科。体長 1.5m内外,体重 80~150kg。全身黒色で,胸の部分に白色の月の輪状の斑紋がある。ただしこの紋は,中央で切れたり,消失したりすることもある。雑食性で,木の芽,果実蜂蜜をはじめアリ,哺乳類などを食べる。積極的に人畜を襲うことはほとんどない。おもに夜行性で,木登りがうまい。寒い地方では冬の間,樹洞や土中の穴などで冬ごもりし,その間に1~3子を産む。アジアの東南部に分布し,日本では亜種 S. t. japonicusが本州,四国の森林地帯に生息する。北海道にいるヒグマに次ぐ大型の陸上食肉類。胆嚢を乾燥したものを「熊の胆」と称し,健胃・強壮薬として用いている。

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