日本大百科全書(ニッポニカ) 「タケノコ」の意味・わかりやすい解説
タケノコ
たけのこ / 筍
笋
竹の子
タケの、地下茎から稈(かん)が枝分れした当初の若い時代のもの。節間がごく短く、そのため各節に1枚ずつ左右交互についている竹の皮は2列に固く巻いている。先端部の組織は髄(ずい)組織と横隔壁の組織が交互に密に上下に重なって続いているが、節間の成長があまりにも速いので、髄組織の分裂増殖がそれについてゆけず、すきまができ、それがしだいに大きくなって空洞となり、髄組織は枯死し、やがて内壁に紙状となって付着して残る。これを竹紙(ちくし)とよんでいる。
[星川清親]
食品
タケノコの可食部100グラムは、水分88.6グラム、タンパク質3.6グラム、脂質0.1グラム、炭水化物は糖質6.0グラムと繊維0.7グラム、灰分1.0グラムを含み、エネルギーは34キロカロリーである。市販されるタケノコの多くはモウソウチクで、タケノコのなかではもっとも太く、収量も多く、味も優れている。また、発芽時期がもっとも早く、西日本では3月ごろから収穫、出荷が始まり、4~5月が最盛期となる。タケノコが地表に出現する直前に掘りとるものが味がよく、伸びすぎると繊維が発達して堅くなって食べられなくなる。とったばかりのものは生食できるが、時間がたつにしたがってえぐ味が出る。ハチクはクレタケやカラタケともよばれ、材が工芸品によく利用され、竹材用栽培の副産物としてタケノコが出荷される。出荷時期はモウソウチクより約1か月遅れる。タケノコはモウソウチクのものよりも細く、普通、地上30センチメートルほど伸び出てから収穫する。味は淡泊でえぐ味が少なく、アワタケ(淡竹)の名もある。マダケも竹材用に栽培され、副産物としてタケノコを食用とする。別名ニガタケ(苦竹)の名が示すように苦味がある。タケノコのとれる時期はモウソウチク、ハチクに続き、5~6月になる。
タケノコは、とったらなるべく早いうちにあく抜きをする。あく抜きは、皮のままたっぷりの米の糠水(ぬかみず)でゆでるが、少なくとも1時間はゆで、そのまま冷めるまで煮汁に浸(つ)けておく。掘ってから時間のたったものは、ゆでる時間を長くする。冷めてから皮をむき、適宜に切り料理する。タケノコは先端は柔らかく、基部は堅いので、部位ごとに分け、それぞれに適した調理をする。淡い風味と色合い、歯ごたえなどを生かして、日本料理をはじめ、中国料理などの多くの料理に利用されている。水煮したものが缶詰やパック詰めとして年間を通して市販されている。缶詰の製造は古く、1888年(明治21)に和歌山市内で始められた。なお、最近は需要が多く、缶詰や乾燥品が中国などから輸入されている。
タケノコの類には、ほかにササの仲間のチシマザサ、別名ネマガリダケがある。北海道や東北地方で山採りされ、ジダケともよばれる。とりたてを火であぶって、みそをつけて食べたり、皮のままゆでて皮をむいて料理に使う。水煮の瓶詰や缶詰も市販され、需要が伸びている。ラーメンに欠かせないメンマは、中国のマチク(麻竹)を蒸してから塩漬けにし発酵させ、天日で干したものである。薄塩にしたものが輸入されているので、塩抜きして料理に用いる。
[星川清親]