ツゲ(読み)つげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツゲ」の意味・わかりやすい解説

ツゲ
つげ / 黄楊
[学] Buxus microphylla Sieb. et Zucc. var. japonica (Müll.Arg.) Rehd. et Wils.

ツゲ科(APG分類:ツゲ科)の常緑小高木。三重県朝熊(あさま)山に生えるのでアサマツゲの名もある。普通は高さ2~3メートルであるが、大きいものは9メートルにもなる。葉は全枝に密生し、黄緑色を帯び、楕円(だえん)形から長楕円形、全縁で長さ2~3センチメートル、幅1~1.5センチメートル。革質で、表面は光沢があり、縁(へり)がわずかに裏面にまくれ、先は鈍くとがるか、わずかにへこむ。雌雄同株。3~4月、葉腋(ようえき)に短い総状花序をつけ、多数の雄花が基部に、中央に1個の雌花がある。雄花は萼片(がくへん)4枚、雄しべは4本、雌花は萼片6枚、子房は3室。果実は蒴果(さくか)で、三つに裂開し、各室に2個の光沢のある種子を含む。材は硬く、緻密(ちみつ)で、櫛(くし)や版木、印判などに用いられる。関東地方以西の本州から九州、屋久島の山地岩場に生える。

 変種のチョウセンヒメツゲは葉は小さく、若枝に毛があり、広島県、岡山県、朝鮮半島、中国に分布する。また、変種タイワンアサマツゲはチョウセンヒメツゲ同様若枝に毛があるが、葉が大きい。沖縄から中国に分布する。基本種であるヒメツゲはクサツゲともいい、庭園樹や花垣に用いられる。

[古澤潔夫 2020年5月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツゲ」の意味・わかりやすい解説

ツゲ(黄楊)
ツゲ
Buxus microphylla var. japonica

ツゲ科の常緑小高木。本州の関東以西,四国,九州の暖地に分布する。山地に自生し,特に石灰岩地に多くみられるが,庭木としてもよく植えられる。幹は直立し高さ1~3mになる。生育が遅く直径 25cmの太さで,年輪が 600~700を数えるものがあるが,通常は径数 cm止りである。若枝は四角柱状で,葉は対生し倒卵形または長楕円形で長さ1~3cm,幅7~15mm,革質で光沢がある。4~5月頃,葉腋に淡黄色の小花が密集して咲く。多数の雄花の中心に1個の雌花がある。雌花,雄花とも萼片は4枚で,花弁を欠く。雄花にはおしべ4本と退化しためしべがある。果実は長さ 1cmほどの楕円形の 蒴果で2本の角があり,熟すると3つに裂開する。材は黄色または淡黄褐色で堅く,狂いが少いため定規,将棋の駒,管楽器三味線の撥 (ばち) などに用いられ,特に櫛材,印材としては昔から有名である。なお,庭木として普及しているイヌツゲ (犬黄楊)は本種とはまったく別のモチノキ科の低木で,外形や葉の形,大きさが似ているが,枝に稜がなく葉が互生することと,黒い球形の実がなる点で区別できる。

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