日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツチバチ」の意味・わかりやすい解説
ツチバチ
つちばち / 土蜂
昆虫綱膜翅(まくし)目ツチバチ科Scoliidaeに属するハチの総称。膜翅目のなかでももっとも大形の種類を含み、ボルネオ島産のものには体長6センチメートルに達するものがある。全身に剛毛がある。体は黒色でしばしば金属光沢を有し、腹部には種特有の黄斑(おうはん)や黄褐色毛帯をもつものが多い。腹部はとくに大きくて長い。日本にはハラナガツチバチ属Campsomerisとツチバチ属Scoliaの2属を普通に産する。雌バチは地表すれすれに飛びながら寄主とするコガネムシの幼虫の地中生息場所を嗅覚(きゅうかく)で探り、地中に直角に掘り進み、幼虫の胸部下面を刺して麻痺(まひ)させ、腹面のほぼ中央に1卵を産み付ける。ヒメハラナガツチバチC. annulataは体長2センチメートル内外、ドウガネブイブイ、マメコガネなどに寄生するが、サイパン島のサトウキビの害虫であるマリアナスジコガネの防除に利用され成功した例がある。熱帯地方のココヤシの大害虫ライノケロス・ビートルrhinoceros beetle/Oryctes rhinocerosにはスコリア・フラビフロンスScolia flavifronsが寄生する。本科に近似のコツチバチ科のコツチバチ属Tiphiaは小形で、ツチバチ類と同じようにコガネムシの幼虫に寄生する。ツチバチやコツチバチは系統的には原始的なカリバチであるが、応用上は重要な益虫が多い。
[平嶋義宏]