ツチバチ(その他表記)hairy flower wasp

改訂新版 世界大百科事典 「ツチバチ」の意味・わかりやすい解説

ツチバチ (土蜂)
hairy flower wasp

膜翅目ツチバチ科Scoliidaeに属する昆虫総称。大型の種類が多く,体には黒色褐色の毛を密生し,全体に黒色で,白色,黄色,橙黄色,赤色などの斑紋や帯紋がある。雌は地表すれすれに飛び,コガネムシ類の幼虫を求めて地中に潜る。獲物をさがしあてると毒針で刺し,麻酔して,適当な深さのところに移し,獲物の腹面の一定の部位に産卵し固定する。幼虫はコガネムシの幼虫を食べ,老熟すると繭をつくりさなぎになる。ツチバチ科に近縁で,小型で黒いコツチバチ科Tiphiidaeのハチは,ツチバチと同じくコガネムシ類の幼虫に寄生する。獲物を麻酔し,その場で産卵し,卵を体のしわのくぼみの一定の部位に固定する。コツチバチの場合は寄主はすぐ麻酔からさめて元の生活に戻る。ツチバチ類は世界に1000種以上が知られ,とくに熱帯に多く分布する。日本にはオオモンツチバチScolia hisforianica japonica,キオビツチバチS.oculata,キンケハラナガツチバチCampsomeris prismaticaヒメハラナガツチバチC.annulataなど十数種が分布する。ツチバチ類とコツチバチ類はともにコガネムシの天敵として重要である。ヒメハラナガツチバチ,マメコガネコツチバチTiphia popilliavora,クロコガネコツチバチT.phyllophagaeなどは,日本からアメリカに侵入したマメコガネの天敵として,日本からアメリカに輸出され,防除に役だっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツチバチ」の意味・わかりやすい解説

ツチバチ
つちばち / 土蜂

昆虫綱膜翅(まくし)目ツチバチ科Scoliidaeに属するハチの総称。膜翅目のなかでももっとも大形の種類を含み、ボルネオ島産のものには体長6センチメートルに達するものがある。全身に剛毛がある。体は黒色でしばしば金属光沢を有し、腹部には種特有の黄斑(おうはん)や黄褐色毛帯をもつものが多い。腹部はとくに大きくて長い。日本にはハラナガツチバチ属Campsomerisとツチバチ属Scoliaの2属を普通に産する。雌バチは地表すれすれに飛びながら寄主とするコガネムシの幼虫の地中生息場所を嗅覚(きゅうかく)で探り、地中に直角に掘り進み、幼虫の胸部下面を刺して麻痺(まひ)させ、腹面のほぼ中央に1卵を産み付ける。ヒメハラナガツチバチC. annulataは体長2センチメートル内外、ドウガネブイブイ、マメコガネなどに寄生するが、サイパン島のサトウキビ害虫であるマリアナスジコガネの防除に利用され成功した例がある。熱帯地方ココヤシの大害虫ライノケロス・ビートルrhinoceros beetle/Oryctes rhinocerosにはスコリア・フラビフロンスScolia flavifronsが寄生する。本科に近似のコツチバチ科のコツチバチ属Tiphiaは小形で、ツチバチ類と同じようにコガネムシの幼虫に寄生する。ツチバチやコツチバチは系統的には原始的なカリバチであるが、応用上は重要な益虫が多い。

[平嶋義宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツチバチ」の意味・わかりやすい解説

ツチバチ
Scoliidae; scoliid wasp; flower wasp

膜翅目ツチバチ科の昆虫の総称。中~大型のハチで体は細長く (雄のほうが雌より細い) ,強固で多毛。体色は黒色で,赤,黄,白などの斑紋や帯紋のある種が多い。前翅の肘室は2~3個で肘脈は外縁に達しない。前後翅とも外縁部は広く,微細な縦条がある。肢は短く,剛毛が密生する。中・後胸腹板は融合して1枚の板になり,中・後肢基節の基部をおおう。雌はコガネムシ科の幼虫に産卵し,孵化したハチの幼虫は外部から宿主を食べて育つ。世界に約 1000種,そのうち日本にはヒメハラナガツチバチ Campsomeris annulatus,キンケハラナガツチバチ C. prismatica,コモンツチバチ Scolia histrionicaなど十数種が知られている。

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百科事典マイペディア 「ツチバチ」の意味・わかりやすい解説

ツチバチ

膜翅(まくし)目ツチバチ科の昆虫の総称。比較的大型のものが多く,黒色地に黄,だいだい,赤などの斑紋があり,黒または金色の剛毛でおおわれる。寄生生活を営み,雌は地中のコガネムシ類の幼虫に産卵,幼虫はこれを食べて発育する。カリウドバチの習性の原始的なタイプともいえる。全世界に約1000種あり,熱帯地方に多い。日本産は約20種。

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