改訂新版 世界大百科事典 「ツユムシ」の意味・わかりやすい解説
ツユムシ (露虫)
Phaneroptera falcata
直翅目キリギリス科の昆虫。深緑色の色彩をした,中型細長の昆虫で,草原の草上にすむ。雄は午後から夜にかけてジ,ジ,ジ,ジィ,ジィ,ジィとよく鳴くが,鳴声はあまり目だたない。ユーラシア大陸に広く分布し,日本全国に見られる。体長15~18mm。前翅の長さ20~22mm,後肢腿節の長さ18~22mm,産卵管の長さ約6mm。頭部は小さく,複眼も大きくない。前胸背板も頭部の大きさに合わせて小型。細長の前翅は緑色であるが,翅脈間の小室は黒いので,全体的には深緑色に見える。雄では前翅の基部に小さい発音器がある。後翅は膜状で,ふつう扇子状に前翅の下にたたまれている。後翅は前翅より長く,体長の約2倍の長さである。前・中肢は細く,また後肢は細くしかも長い。雄の尾角は湾曲し,先端近くでやや太くなり,さらに先に進むとまた狭まり,先端はとがっている。雌の産卵管は縦に幅広く,鎌状で上方にそっており,先端は丸みをもち,縁に多少弱い歯状部をもつ。年1~2化性。成虫は7~10月に出現する。ヨモギなどの草上を好み,飛ぶこともあるが飛び方は弱い。雌は植物の葉の縁に沿って卵を産みつける。灯火に寄ってくることがあるので,夏の夜など開いている窓から灯火目がけてやってくる個体をしばしば見受ける。なお,日本のツユムシ類には,このほかアシグロツユムシP.nigroartennata,セスジツユムシDucetia japonica,ウンゼンツユムシD.unzenensis,エゾツユムシD.chinensis,ホソクビツユムシAnisotima japonicaなどが知られている。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報