テオドレトス(その他表記)Theodōrētos; Theodoret of Cyrros

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テオドレトス」の意味・わかりやすい解説

テオドレトス[キュロス]
Theodōrētos; Theodoret of Cyrros

[生]386/393. アンチオキア
[没]458/466. キュロス
キュロスの主教。護教家。聖書解釈,教理神学教会史の分野における著述家として知られる。 428年以後友人ネストリウスアレクサンドリアキュリロスの間で展開されたキリスト論論争に加わり,アンチオキア学派のキリスト両性論を主張し,キュリロスの最大の論敵の一人となった。キリスト単性説をとるいわゆるエフェソス盗賊教会会議 (449) によって免職されたが,カルケドンの公会議 (451) でネストリウスを排斥することによって復職した。しかしキュリロスに対するテオドレトスの駁論コンスタンチノープル公会議 (553) で再び否認された。著書には,旧約聖書の注解のほかに,『宗教史』 Historia religiosa,エウセビオスの『教会史』を 428年まで延長したその続編ともいうべき『教会史』 Historia ecclesiasticaがあり,特にそのうちに含まれる史料によって貴重である。

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改訂新版 世界大百科事典 「テオドレトス」の意味・わかりやすい解説

テオドレトス(キュロスの)
Theodōrētos
生没年:393ころ-466

シリアのキュロスKyrrhosの主教,ギリシア人教父。隠修士として研鑽を積むがネストリウスと友人になり,アンティオキア学派一員としてキリスト両性論を主張して異端論争に巻き込まれた。アレクサンドリアのキュリロスを批判して,盗賊教会会議(449)では単性論者のために退けられたがのちに復権書簡・著書が多く現存し,《教会史》は4~5世紀の貴重な史料で,そのほか禁欲者の伝記キリスト教・異教比較論などがある。
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世界大百科事典(旧版)内のテオドレトスの言及

【三章問題】より

…〈三章Tria Kephalaia〉(英語ではThree Chapters)とは,6世紀の単性論派論争においてネストリウス的異端の疑いをかけられた3人の神学者の人物と著作を指す。すなわちモプスエスティアのテオドロスの人と著作,テオドレトスがアレクサンドリアのキュリロスに反駁した著作,エデッサの主教イバスIbas(在位435‐457)がペルシアの一主教マリスMarisにあてた書簡である。これはユスティニアヌス帝の勅令(543‐544)およびコンスタンティノープルの第5回公会議(553)で異端とされたが,現在では一方的な断罪であったと考えられている。…

※「テオドレトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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