日本大百科全書(ニッポニカ) 「テグスサン」の意味・わかりやすい解説
テグスサン
てぐすさん / 楓蚕
fish-line silkworm
[学] Eriogyna pyretorum
昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤママユガ科に属するガ。はねの開張90~120ミリメートル。雄より雌のほうが大形。前翅の中央部と外縁部および後翅は白く、横脈上に大きな眼状紋があって紫黒色の環で縁どられている。前翅頂部には赤斑(せきはん)があり、その内側に黒条がある。中国の原産で、中国南部、ことに海南島で絹糸(けんし)虫として飼養され、インドシナ半島や台湾でも飼われている。年1回の発生で、幼虫はフウ、クスノキなどで飼育される。繭あるいは幼虫の絹糸腺(せん)からとった糸はテグスとよばれ、優れた釣り糸、外科用縫合糸などに利用されてきたが、化学繊維の発達によって、その需要はしだいに減少してしまった。
[井上 寛]