日本大百科全書(ニッポニカ) 「テヅルモヅル」の意味・わかりやすい解説
テヅルモヅル
てづるもづる / 手蔓藻蔓
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棘皮(きょくひ)動物門クモヒトデ綱革蛇尾目テヅルモヅル科に属する海産動物の総称。絡まり合ったつる草、あるいは海藻のような異様な外観の動物。代表種オキノテヅルモヅルの学名(属名)Gorgonocephalusは、ギリシア神話にでてくる怪女ゴルゴンの頭を意味する。ゴルゴンの頭髪はすべて生きたヘビからなり、その顔を見た者は石に化せられるというが、この動物の生きて動く姿はその名にふさわしく、あたかも数百匹の小蛇が塊となってうごめいているような奇怪な感じを与える。元来、クモヒトデの仲間であり、体の中央に丸い盤があって、5本の腕が伸び出るが、腕が先のほうへいくにつれ何度も枝分れしているため、全体として無数のつるが絡み合ったような形となり、またその1本1本がくねくねとヘビのような動き方をするため、見る者に異様な感じを与えることとなる。大形種は直径50センチメートル以上になる。体色は暗紫色、黒色、茶褐色、淡黄色、サーモンピンクなどのものがある。日本近海からはオキノテヅルモヅルGorgonocephalus eucnemis、セノテヅルモヅルAstrocladus coniferusなど十数種が知られ、水深数十メートルの所から1500メートルの深海底まで分布する。
[重井陸夫]