テンジクハナダイ(読み)てんじくはなだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンジクハナダイ」の意味・わかりやすい解説

テンジクハナダイ
てんじくはなだい / 天竺花鯛
[学] Grammatonotus surugaensis

硬骨魚綱スズキ目シキシマハナダイ科に属する海水魚。伊豆大島、伊豆半島、静岡県富戸(ふと)、駿河湾(するがわん)沼津(ぬまづ)沖、土佐湾、大隅(おおすみ)海峡などの海域に分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。尾柄(びへい)は短くて高く、長さと高さはおよそ等しい。吻(ふん)は丸い。目は比較的大きいが、眼窩(がんか)径は頭部眼後長(目の後縁から鰓孔(さいこう)までの長さ)より小さい。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の幅は狭く、その後端は瞳孔(どうこう)の前縁下に達する。上顎に1列の大きい歯があり、その前端の各側に1~2本の犬歯がある。下顎には前端の各側に2本の前方に向かう犬歯と、前部に絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、後方に2本の犬歯、側部に1列のかなり大きい歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に小さい歯があるが、舌上にはない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)は丸くて、棘(きょく)がない。主鰓蓋骨に鋭い棘が1本ある。下鰓蓋骨と間鰓蓋骨の縁辺は円滑鰓耙(さいは)は長くて密生し、最長のものは鰓葉長より長い。鱗(うろこ)は大きい櫛鱗(しつりん)で、はがれやすい。口唇、背びれ、臀(しり)びれには鱗がない。背びれの起部から肛門(こうもん)までの斜めの鱗数は10枚、縦列鱗数は25~26枚。側線は鰓孔(さいこう)の上端から背びれ第6棘に向かって斜めに上昇し、背びれの基底部近くを走り、背びれ後端付近で終わる。背びれと臀びれの間に欠刻(切れ込み)がない。背びれ棘は11本で、細長く、柔らかいので曲げやすい。第6棘がもっとも長い。臀びれ第3棘は第2棘より長い。胸びれ腹びれの後端は肛門の垂線に達する。尾びれの軟条はいくぶん糸状に伸長する。体は橙赤(とうせき)色で、腹側面は銀白色。虹彩(こうさい)は黄色で、瞳孔の下方に赤色、上方に褐色の帯状斑(はん)がある。背びれと臀びれは黄色で、幅広い淡紫色の帯がある。尾びれは黄色。体長8センチメートルほどにしかならない小形種である。水深65~120メートルの岩礁域の中層に単独で生息する。オオメハナダイに似るが、本種は目が頭部眼後長より小さいこと、より浅所の沿岸にすむことなどで区別できる。

[尼岡邦夫 2022年12月12日]


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