テンペスト(読み)てんぺすと(英語表記)The Tempest

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テンペスト」の意味・わかりやすい解説

テンペスト
てんぺすと
The Tempest

イギリスの劇作家シェークスピア喜劇。通常「ロマンス劇」と称せられる作品群の一つ。嵐(あらし)の意味。1611年11月1日宮廷で初演。単独作としては彼の最後の作品である。出版は1623年。邪悪な弟アントニオにミラノ公国を奪われたプロスペローは娘ミランダとともに孤島に住んでいるが、魔法によって弟やナポリ王アロンゾらの乗った船を難破させる。彼らはこの島に漂着するが、アロンゾの子息ファーディナンドがミランダと恋に陥る。彼女はこれまで、男といっては、父と召使いの怪物キャリバンしか見たことがなかったので、彼女はいわば第三の男に恋をしたことになる。彼はプロスペローの課した厳しい試練に耐えて、結婚を許される。アントニオも公爵領を返還することを条件に罪を許される。プロスペローは魔法の杖(つえ)を折り、長らく召し使った妖精(ようせい)エアリエルを解放し、一同とともに帰国することになる。時間と場所と筋の統一を主張する古典主義のいわゆる「三一致の法則」を守ったシェークスピア唯一の戯曲である。単独作としては最後の作品であるところから、作者が劇壇引退の心境をプロスペローに託したと解する批評家もいるが、晩年のシェークスピア劇に共通した和解テーマが顕著である。

小津次郎

『豊田実訳『あらし』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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