アメリカの地質学者。カナダ、オンタリオ州ナパニーで生まれる。ハーバード大学で博士号を取得した。マサチューセッツ工科大学教授を経て、ハーバード大学教授を務めた(1912~1942)。世界各地の地質調査による豊かな経験と、独創的発想力をもつ。『火成岩とその成因』『変動する地球』『地球の強度とその構造』などの著作に示されるように、地質学および地球物理学に関する多面的、総合的研究を行った。なかでも、マグマのストーピング現象についての提唱、第四紀の海水面の上昇・沈降、サンゴ礁の生成を氷河の衰退・発達に関連づけた氷河制約説や、海底峡谷を形成する作用として、のちに混濁流(乱泥流)と名づけられた密度流の存在を推定した学説は現在まで大きな影響を与えている。
[木村敏雄]
カナダ生れの地質学者。オンタリオ州の茶商人の子に生まれ,カナダのビクトリア・カレッジをへて,ハーバード大学で地質学を学び,1896年学位を得る。ドイツとフランスに留学。1901年からカナダ西部の山岳地帯を地質調査。07年マサチューセッツ工科大学教授,12年ハーバード大学の地質学教授となり,42年まで在職。この間,20年にアメリカ国籍を取得。北アメリカのほか北ヨーロッパ,太平洋地域,大西洋地域,南アフリカなど広く調査した。はじめ火成岩の起源について研究し,玄武岩マグマの重要性を強調,《火成岩類とその起源》(1914)をまとめた。さらに大洋島やサンゴ礁に注目し,氷河による海水面変動を提唱,海底谷の形成も説明するなど独創性を発揮した。晩年には地殻と地球全体の構造にも関心をむけ研究した。多くの著作がある。
執筆者:清水 大吉郎
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…続いてJ.D.デーナは53年にサンゴ礁背後の島の海岸線の屈曲と溺れ谷の存在は沈降説の地形的証拠であるとした。一方,R.A.デーリーは1910‐34年にかけて,氷河の消長と海水準変化は密接な関係があり,氷期の氷床の発達は60~90mほどの海水準の低下をもたらして活発な海食による泥質の堆積物を形成し,環礁の礁湖底の平たんさと水深の一様さは海水準低下の地形証拠であるとした。また氷期には海水温も5~10℃の範囲で低下し,泥質堆積物とあいまって礁の形成は阻止され,その後現在の間氷期に向かって海水準が上昇し,礁の形成が行われたという氷河制約説glacial control theoryを提唱した。…
…この砂,泥と海水の混合した密度の高い流れを混濁流あるいは乱泥流という。この流れは海谷を生じる原因としてR.A.デーリーが1936年に想像したものであるが,1929年のグランド・バンクス地震その他の大地震による海底電線の切断により,実在すると考えられている。また深海底で採取された多くの柱状堆積物では泥の中に砂層(深海砂と呼ぶ)が挟まれており,その砂中に浅海底にすむ生物(有孔虫など)の死殻が多く発見されている。…
※「デーリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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