トダ(読み)とだ(その他表記)Toda

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トダ」の意味・わかりやすい解説

トダ
とだ
Toda

インド、タミル・ナド州ニルギリ丘陵に居住する指定部族。南インド最大の避暑地であるオータカムンド付近に1500人程度(1995)の小人口をもち、20世紀末までに生活は大きく観光化した。変形の著しいドラビダ系言語を用い、移牧的水牛飼養が主産業で、穀物その他の必需品は隣接部族から物々交換で入手していた。一妻多夫的婚外性関係を認め、家族を単位とする父系親族世帯群が集まって外婚集団を形成した。外婚集団が集合して半族を構成したが、どの段階にも首長はなかった。水牛飼養から未分離であった儀礼と、水牛供犠(くぎ)を伴う長期にわたる二段階の葬礼特徴的であった。近代化によりプランテーションが水牛放牧場を蚕食し、1953年以降一妻多夫関係の人口学的基盤であった女児殺しが厳禁され、伝統的な社会文化要素が消滅しつつある。イギリスのリバーズによる調査で人類学史上では有名である。

[佐々木明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「トダ」の意味・わかりやすい解説

トダ

インドのデカン半島南部のニールギリ山地に居住する人びと。ドラビダの一つ。急速に滅亡しつつあり,現在数百人。水牛の放牧ときわめて未開な酪農依存。社会の基本単位として父系および母系氏族存在創造神狩猟の神あるいは水牛の神の信仰,一妻多夫婚の慣行に特徴がみられる。
→関連項目指定部族

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android