コンスタンティノープルの征服者であるオスマン帝国のメフメト2世征服王によって,1454年から15世紀後半にかけてイスタンブールの要衝の地に創設された木造の宮殿。1574年,1665年,1862年の災害後に再建されたが,19世紀にボスポラス海峡沿いにドルマバフチェ宮殿(1853)などのヨーロッパ風の宮殿が建てられるまで,歴代のスルタンたちにより増改築が繰り返された。したがって,様式は混交し統一性に欠ける。かつて王宮を囲んでいた城壁の〈大砲の門(トプカプ)〉が,宮殿の名称となっている。同宮殿は,正門〈帝国の門〉,中門〈表敬門〉,第3の門〈幸福の門〉によって結ばれた三つの主要な中庭の周囲に配置された種々の建物から構成されている。すなわち〈謁見の間〉(1585),レワン・キオスク(離宮)(1635),バグダード・キオスク(1638),ムスタファ・パシャ・キオスク(1774-89),チニリ(タイル張りの)・キオスク(1472)などの各パビリオン,モスク,ハレム(1550創設),浴場,アフメト3世の図書館,宝物庫,厨房(16世紀)などから構成される。
1925年の共和制樹立後に国立博物館となり,現在,収蔵展示されている古写本類,1万数千点のミニアチュール,1万点を超える東洋陶磁器,武器・武具,スルタンの衣服・馬車,宝飾品などは,いずれも輝かしいオスマン帝国の歴史と文化を示す貴重な文化遺産である。
執筆者:杉村 棟
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イスタンブール旧市街の東端、三方を海に囲まれた高台にある宮殿。古代にはアクロポリスの地であった。15世紀後半にオスマン帝国のメフメト2世が建設を始め、歴代のスルタンが増改築を加えて、多数の建物を擁する広大な宮殿になったが、1863年の大火でその多くが焼失した。トプカプの名は正門前にあった2門の巨砲に由来する。
現在は博物館として公開され、宝物庫には大きな宝石を無数にちりばめた豪華な家具調度、宝飾品、衣装、美術史的に貴重な写本や細密画などがある。もとの調理場には中国磁器の大器、逸品が多数展示され、有田焼、ガラス器などもある。現存している建物では、庭園内のバグダット・キョシキュがもっとも華麗である。なお、この宮殿のあるイスタンブール旧市街は1985年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[紅山雪夫]
『トプカプ宮殿博物館全集刊行会編・刊『トプカプ宮殿博物館』全5冊(1980)』
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オスマン帝国の宮殿。イスタンブルを征服したメフメト2世により1465~78年に造営され,1853年までスルタンの居城として用いられた。外廷,内廷,ハレムからなり,御前会議の場として長く国政の中心であった。
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…コンスタンティノポリスの英語名コンスタンティノープルConstantinopleも旧称として広く使われている。
【古代ギリシア・ローマ時代】
ボスポラス海峡のヨーロッパ側南端部,北を金角湾,南をマルマラ海で挟まれた半島のさき,現代のトプカプ宮殿の地点に,前659年(カエサレアのエウセビオス伝承)ないし前668年(ヘロドトス伝承)に,メガラ人により,ギリシア人植民市として建設されたといわれる。アケメネス朝のダレイオス1世のスキタイ遠征から前478年までペルシアの,続いてアテナイの支配をうけた後,アテナイとスパルタの対立にまきこまれ,そのいずれかの勢力に属することになった。…
… オスマン朝の宮廷制度は,15世紀以降に本格的に発展した。とりわけ15世紀後半,メフメト2世によるコンスタンティノープル征服の後,新都イスタンブールに,従来の首都ブルサとエディルネにおける宮殿に加えて,〈旧宮殿〉,〈新宮殿〉(別名トプカプ宮殿)が新たに造営され,制度的にも著しい発展を遂げた。オスマン朝では,宮廷はペルシア語からの借用語で〈サライ〉と呼ばれ,君主の公務の場としての外廷と,君主の私的生活の場としての内廷と,宮廷の女性の生活の場としてのハレム(後宮)とに分かれていた。…
※「トプカプ宮殿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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