割竹やプラスチックパイプの両端を土壌に挿入してかまぼこ型の骨組みを作り,ポリエチレンや塩化ビニルのフィルムで被覆した作物栽培用の小型の保温施設をトンネルといい,それを用いて野菜などを栽培すること。トンネルは,同じ作物栽培用の保温施設であるハウスに比べると,より少ない費用で防寒できるが,(1)加温できない,(2)内部に入って作業することができない,(3)草丈の高くなる作物では生育の初期にしか利用できない(生育後半にはトンネルをとり去る)という欠点がある。また,春の晴れた日には,トンネル内の温度が高くなりすぎるので,フィルムをずらして換気しなければならない。しかしトンネル栽培を行うと,トマトやナスなど,生育適温が高い野菜の苗を露地栽培よりも早く定植し,初期生育,ひいては収穫時期を早めることができる。また,レタスやセロリなど,生育適温は低いが,霜にあうと品質が著しく低下する野菜でも,冬の間はこの栽培方法が用いられる。
高知県や宮崎県などでは,昭和の初めころから,油紙を張ったトンネルを用いてトマト,ナス,キュウリなどの促成栽培が行われたが,これがトンネル栽培の始まりである。トンネル栽培は,ポリエチレンフィルムが利用されるようになった1955年以降,急速に各地に普及したが,換気が面倒で,作業もしにくいため,一部ではハウス栽培へと移行している。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
作物の栽培において、畝(うね)をトンネル状にビニルまたはポリフィルムなどで覆って保温し、生育を早めたり、外界がその作物の生育に適さない低温の場合でも安全に栽培する方法。トンネル栽培はおもにレタス、ホウレンソウ、ハクサイ、カブ、イチゴなど比較的背丈の低い野菜や花類などに用いられ、またメロン、キュウリ、カボチャ、スイカ、トマト、ナスなどでも用いられるが、これらは若いうちだけトンネルに栽培して、低温期にも生育を進め、外界が生育に適する温度になったら、生育の後半はトンネルを除いて栽培することも多い。イネなどの育苗にも用いられる。
トンネルはハウスに比べて設置費用が安価であるが、トンネルの保温効果はビニルハウスに比べると不完全なので、冬の比較的暖かい西南暖地で多く用いられる。寒冷地ではハウスの補助程度に用いられるが、積雪地帯には適さない。またトンネル被覆のため蒸散が抑制され灌水(かんすい)が省力される利点があるが、過湿の害もみられる。
トンネルは竹やプラスチック、グラスファイバーの細棒を支柱にし、畝に直角に湾曲させて両端を土に挿して固定し、その上にフィルムをかけ、その上から紐(ひも)や縄をかけて押さえる。フィルムの両わきは土で押さえるが、高温の場合は裾(すそ)をあげて温度の調節を図る。
[星川清親]
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