日本大百科全書(ニッポニカ) 「トンネル栽培」の意味・わかりやすい解説
トンネル栽培
とんねるさいばい
作物の栽培において、畝(うね)をトンネル状にビニルまたはポリフィルムなどで覆って保温し、生育を早めたり、外界がその作物の生育に適さない低温の場合でも安全に栽培する方法。トンネル栽培はおもにレタス、ホウレンソウ、ハクサイ、カブ、イチゴなど比較的背丈の低い野菜や花類などに用いられ、またメロン、キュウリ、カボチャ、スイカ、トマト、ナスなどでも用いられるが、これらは若いうちだけトンネルに栽培して、低温期にも生育を進め、外界が生育に適する温度になったら、生育の後半はトンネルを除いて栽培することも多い。イネなどの育苗にも用いられる。
トンネルはハウスに比べて設置費用が安価であるが、トンネルの保温効果はビニルハウスに比べると不完全なので、冬の比較的暖かい西南暖地で多く用いられる。寒冷地ではハウスの補助程度に用いられるが、積雪地帯には適さない。またトンネル被覆のため蒸散が抑制され灌水(かんすい)が省力される利点があるが、過湿の害もみられる。
トンネルは竹やプラスチック、グラスファイバーの細棒を支柱にし、畝に直角に湾曲させて両端を土に挿して固定し、その上にフィルムをかけ、その上から紐(ひも)や縄をかけて押さえる。フィルムの両わきは土で押さえるが、高温の場合は裾(すそ)をあげて温度の調節を図る。
[星川清親]