セロリ(読み)せろり(英語表記)celery

翻訳|celery

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セロリ」の意味・わかりやすい解説

セロリ
せろり
celery
[学] Apium graveolens L. var. dulce DC.

セリ科(APG分類:セリ科)の一年草。ヨーロッパ原産で、ヨーロッパ中部から南部、アフリカ、南アメリカ、西アジアおよび西インドにかけて野生種が分布している。一説にはスウェーデン原産ともいわれる。野菜および香辛料として広く栽培されている。茎は高さ60~90センチメートルになり、稜(りょう)が目だつ。葉は羽状複葉で互生し、葉柄の基部は肉厚の鞘(さや)状となる。普通は6~9月にとう立ちした茎の上部に複散形花序を出し、緑白色の小さな5弁花を多数つける。果実は長さ2ミリメートルの卵形ないし扁球(へんきゅう)形で、香辛料として利用される。

[星川清親 2021年11月17日]

文化史

全草に芳香があり、古代エジプト時代から薬用として利用され、ミイラの首飾りとして装飾に用いられた。ヨーロッパでの栽培は16世紀から記録があり、イタリアで始まったといわれる。中国へは7世紀に伝わったとされるが、栽培は17世紀以降で、それは野生型に近いものだったらしいが、いまでも野生型に近いキンツァイ(芹菜)が栽培されている。キンツァイは葉柄が細いが、香りは強い。日本への渡来は一説には豊臣秀吉(とよとみひでよし)の朝鮮出兵の際といわれ、加藤清正にちなんでキヨマサニンジンともよばれた。その後、オランダ人によって長崎に伝えられ、オランダミツバともよばれた。しかし、独特の強い香りのため日本人の食生活になじまず普及しなかった。第二次世界大戦後、食生活の洋風化に伴って消費されるようになり、昭和30年代から消費量が急激に増加した。

[星川清親 2021年11月17日]

栽培

栽培は、夏作を中心とした長野県と、冬作中心の静岡県とが主産地で、両県で全国生産の64%を占める。品種は多く、黄色種、緑色種、中間種に大別される。また、香辛料にする果実は野菜用に改良されたものよりも野生型のセロリのほうがよいとされる。日本で栽培されるのはほとんどが中間種の品種で、コーネル19号、コーネル619号などが知られている。苗床種子を播(ま)き、2回移植して育苗し、本葉が7~12枚に育ったときに定植する。冷涼な気候でよく育ち、露地のほかトンネル、ハウス、加温栽培によって一年中栽培、出荷される。昔は食用部の葉柄に土寄せしたり、紙を巻いたりして軟白させたが、現在では軟白しないことが多い。

 なお、変種のセロリアークは根を食用とし、コンヨウ(根用)セロリの名がある。

[星川清親 2021年11月17日]

食品

葉、とくに葉柄は柔らかく甘味がある。葉柄をスティック状に切り、塩やマヨネーズをつけて生食し、またサラダに入れて食べる。煮るとさらに風味が増すのでスープやシチューにもよい。葉身の部分はブーケガルニに加え、煮込み料理の臭み消しや香りつけに用いる。うま味の成分はアピインというフラボン配糖体やマンニットなどである。果実には3%ほどの精油を含み、強いセロリ香がある。香辛料としての利用は広く、乾燥したものがセロリシードといって市販されている。

[星川清親 2021年11月17日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例