日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドネツク」の意味・わかりやすい解説
ドネツク
どねつく
Донецьк/Donets'k
ウクライナのドネツク州の州都。ドネツィクともいう。1924年までユーゾフカЮзовка/Yuzovka、1961年までスターリノСталино/Stalinoとよばれた。ドンバス重工業地帯の最大級の中心都市の一つで、人口101万6000(2001)、91万0252(2018推計)。1860年代にイギリス人ヒューズJohn James Hughes(1814―1889)がロシア最初の近代的溶鉱炉を当時無人のステップ(短草草原)に建設したのが市の創始で、労働者が集まり、まもなく市となった。帝政末期には製鉄のほか10の炭坑、コークス工場、その他の小工場が立地した。ソ連になってから第一次五か年計画(1928~1932)により最重点投資が行われ、ドンバス屈指の工業都市となった。当時の新市名「スターリノ」はスターリンを記念する最高の名誉を担っていた。現在は石炭生産、製鋼、冶金(やきん)、鋳造、機械製作、石炭化学、石油化学、プラスチック、製紙、日用品、食品など幅広い工業分野をもつ。総合大学、工業技術関係の単科大学や専門学校、郷土館、美術館など教育・文化施設も多い。市はアゾフ海に流入するカリミウス川の上流部に位置し、周囲を美しい丘陵、果樹園などで囲まれている。
[渡辺一夫]