ドラマ(読み)どらま(英語表記)Dráma

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドラマ」の意味・わかりやすい解説

ドラマ(劇)
どらま
drama

ギリシア語の「行動する」を意味する動詞ドラーンdrānに由来し、普通「劇」と訳されるが、理念と上演様式に分けて考えねばならない。理念としては、何者かとの対立契機としてあらわになる人間の主体的存在を中心的かつ効果的に表現する一連のできごとをさし、「このダンスにはドラマがある」といったとき、こうした理念の内在することを意味する。一方、上演様式としてのドラマは、この理念の実人生的洞察に満ちた表現そのものを目的とする上演作品をさす。なお、この理念にのっとり、対話の形式で文字に固定したもの、すなわち「戯曲」がドラマの名でよばれることもある。また、18世紀フランス啓蒙(けいもう)思想家ディドロが唱えた「市民劇」drameをドラマとよぶ場合がある。これは、王侯貴族の活躍する劇は悲劇庶民の活躍するものは喜劇といった従来の区別を排して、悲喜こもごもする市民階級生活と感情を写実的に描こうとしたもので、「近代劇」の先駆となった。

[高師昭南]


ドラマ(ギリシア)
どらま
Dráma

ギリシア北東部、ドラマ県の県都テッサロニキの北東195キロメートルに位置する。古称ドラベスクスDrabescus。人口5万5632(2001)。商業たばこ産業の中心地。1913年にギリシア領となる。1922年トルコとの住民交換の結果、ギリシア人避難民によって人口が2倍に増大した。

 ドラマ県はマケドニア地方東部の県で、面積3468平方キロメートル、人口10万5300(2003推計)。水資源と平野に恵まれ、たばこの産地として知られる。

[真下とも子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドラマ」の意味・わかりやすい解説

ドラマ
Dhráma

ギリシア北部,マケドニア地方東部の都市。セサロニキの東北東約 120km,ドラマ平野の北縁に位置する。 18世紀に南東のフィリッピに代ってこの平野の中心地になったが,第1次世界大戦まではトルコ風の小さな町であった。戦後トルコ (オスマン帝国) とギリシアの間で結ばれた住民交換協定によってトルコ系住民が去ったあと,トルコに住んでいたギリシア人が流入,人口がほぼ倍増した。タバコ栽培地帯の中心地で,タバコ研究所がある。セサロニキと鉄道で結ばれ,南東のエーゲ海の港カバラへ道路が通じる。人口3万 9914 (1991推計) 。大都市圏9万 6978 (1991推計) 。

ドラマ
drama; drame

ギリシア語のドラン (行動する) に由来し,一般に戯曲の意味に用いられるが,演劇学上の概念としては,悲劇や喜劇のいずれのジャンルにも属さない劇をいう。 18世紀の中頃にフランスに興り,D.ディドロの作品にみられるように中産階級の生活をシリアスに描いた市民劇が代表的なもの。

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