見せ物芸能の一種で、猿に芸を仕込んで芝居をさせるもの。猿回しの系統に属する。すでに寛文(かんぶん)(1661~73)ごろから、猿と犬や鼠(ねずみ)、猫などとをいっしょに芝居させることが行われていた。貞享(じょうきょう)(1684~88)のころ、江戸・湯島天神前の水右衛門という者があらゆる動物を仕込む名人として有名であったという。のちには、猿にかつらをつけ、衣装を着せて、三味線、太鼓もにぎやかに踊りをさせたり、歌舞伎(かぶき)の一くだりを演じたりもした。江戸の太夫元(たゆうもと)は小川門太夫といって明治まで9代続いた。三番叟(さんばそう)、一の谷の組打ち、忠臣蔵の五段目など、時々の流行演目を小屋掛けの見せ物か大道で演じさせた。明治以降も、金色夜叉(こんじきやしゃ)、月形半平太、肉弾三勇士、継子(ままこ)いじめなどといった新派や映画からの取込み物や時局物を臨機応変に猿芝居化していたが、見られなくなって久しい。なお一般には、下手(へた)なたくらみ、あさはかな企てをあざ笑っていうことばとして用いられる。
[織田紘二]
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