人の生活、生産活動などのために利用可能な水。水は生活用水(家庭用水:飲料用、調理用、洗濯用、風呂用、トイレ用など、都市活動用水:営業用、事業所用、公共用など)、工業用水(ボイラー用、原料用、製品処理用、洗浄用、冷却用など)、農業用水(水田・畑灌漑(かんがい)用、畜産用など)、水力発電などに使用される。水資源として河川水、湖沼水、湧水(ゆうすい)、地下水などが使用される。水資源の源は降水であり、水資源は再生可能な資源である。
[鮏川 登]
日本では水資源として、おもに河川水と地下水が使用されている。日本の河川は流域が小さく、勾配(こうばい)が急で、河川流量は降雨や融雪があると多くなり、ないと少なくなり、降雨や融雪の状況に応じて変動する。日本の年平均降水量は1690ミリメートルで、世界(陸域)の年平均降水量の約2倍と多く、また降水は年間を通じてあるが、降水量は梅雨期、台風期、降雪期に多く、季節的に変化するために、年間の河川流量は変動する。そのため河川水を1年を通して安定して利用するためにはダムをつくり、流量が多いときに貯水し、少ないときに放流して不足分を補うことが必要になる。河川水を使用するときは河川管理者(国、都道府県)の許可(水利権)を得ることが必要である。地下水は過剰に揚水すると、地下水位が低下し、枯渇したり、地盤沈下を生じたりするので、適正に管理することが必要である。地下水の揚水が規制されている地域もある。量はわずかであるが、海水の淡水化、雨水や下水処理水の利用も行われている。
[鮏川 登]
日本では、弥生時代に水の得やすいところで水田稲作が行われた。古墳時代以降、水田開発のために灌漑用の溜池(ためいけ)や用水路などがつくられた。江戸時代には、新田開発のために河川に堰(せき)をつくり、用水路を開削するなどの灌漑事業が各地で実施された。東京(江戸)、水戸、金沢、名古屋、鹿児島などでは河川や湧泉(ゆうせん)を水源とする水道が敷設された。
明治時代以降も灌漑用ダムの建設、揚水機場の設置などにより灌漑用水の開発が進められた。1887年(明治20)に横浜で近代式水道が敷設されたのを始めとして、明治時代に函館(はこだて)、長崎、大阪、広島、東京、神戸などで近代式水道が敷設された。これらの水道は河川を水源とし、長崎、神戸では水道用のダムがつくられた。大正時代以降も水道の敷設が進められた。1890年に水力発電が始められた。大正時代以降には発電用のダムがつくられ、水力開発が進められた。昭和30年代以降の産業の発展と都市への人口集中の進展、生活様式の変化などにより都市における工業用水および生活用水の需要が増加し、ダム建設などによる水資源開発が進められた。1997年(平成9)ごろからは節水技術の進展、産業構造の転換、経済成長の鈍化、水稲作付面積の減少などにより水使用量は減少している。平成24年版「日本の水資源」(国土交通省水管理・国土保全局水資源部)によると、2009年(平成21)における全国の水使用量は約815億立方メートル(1997年の水使用量の91%)で、そのうち67%は農業用水、19%は生活用水、14%は工業用水として使用されている。水源は河川水が88%、地下水が12%である。水力発電の2010年度の発電電力量は約907億キロワット時で、全発電電力量の7.9%を占めている。近年は再生可能エネルギーの一つとして用水路などを利用した小規模な水力発電が注目されている。
[鮏川 登]
地球上の水の総量は13億8600万立方キロメートルとされる。そのうちの96.5%までが海水である。ついで大きな割合を占めるのが、氷雪(2406万立方キロメートル)であり、その90%近く(2160万立方キロメートル)は南極にある。地下水(2340万立方キロメートル)、湖水(18万立方キロメートル)がそれに続く。地下水、湖水には塩水等も多く、地球上の水のうち、水資源としてもっとも利用価値の高い淡水は3500万立方キロメートルで、全体の2.5%を占めるにすぎない。これには氷雪や凍土に含まれる水分、利用できないほど深い位置にあったり、地層内に閉じこめられたりしている地下水も含まれており、水利用の鍵(かぎ)となる河川水、利用可能な地下水は限られている。
河川水などの供給源となる降水量の多寡は、地域によって著しく異なり、年間を通しての季節による偏りも場所によって大きな違いがある。それが気候の違いによる農業形態の違いや地域ごとの生活様式の違いを生み、文明の発達・盛衰にも影響してきた側面がある。たとえば、ナイル川における毎年の氾濫(はんらん)を農業暦のなかに組み込んだ耕作をしていたとされる古代エジプトでは、一種の自然災害を土壌の供給・灌漑の機会ととらえ、利水に結び付けていた。氾濫時期を正確に予測するために天文観測が発達し、その結果、暦が発達したとされている。また古代ローマ帝国では、多くの人口を抱える首都ローマに上水を引くために水道(ローマ水道)が建設された。その一部である水道橋は当時の建設技術の高さを示しながら現在も残っている。砂漠に残された遺跡・ペトラや「天空の都市」とよばれるマチュ・ピチュにも高度な利水施設の痕跡(こんせき)がある。
20世紀に入ってからは、先進国ではダムの建設や上水道の敷設などが進み、水利用の制限・限定性は低くなってきている。とはいえ、水質汚染の問題は直接の原因を変えながらも繰り返し発生し続けている。
一方、開発途上国を中心に上水が十分に手に入らない人々は依然少なくない。安心して飲める飲料水が手に入らないという人々の数は世界人口のかなりの数を占めている。こうした問題を克服しようという水資源の開発が大規模であればあるほど、自然破壊や生態系の問題を引き起こす可能性も高い。また、水をめぐって国際紛争が引き起こされるなど、世界の水資源の問題は絶えない。
このような問題・課題を背景に1996年、国際復興開発銀行(IBRD。通称、世界銀行)と国連教育科学文化機関(UNESCO)の国際機関等が中心となり、世界水会議(WWC=World Water Council)が設立され、1997年より3年に一度、世界の水問題を議論する会議、世界水フォーラムが開催されている。
[加藤幸治]
『中澤弌仁他著『土木工学大系24 ケーススタディ水資源』(1978・彰国社)』▽『中澤弌仁著『水資源の科学』(1991・朝倉書店)』▽『水文・水資源学会編『水文・水資源ハンドブック』(1997・朝倉書店)』▽『国土庁水資源部編『新しい全国総合水資源計画』(1999・大蔵省印刷局)』▽『世界水ビジョン川と水委員会編『世界水ビジョン』(2001・山海堂)』▽『国土交通省土地・水資源局水資源部編『日本の水資源』各年版(財務省印刷局)』
資源には更新不可能な資源(石油,鉄鉱石など,一般に資源といわれるもののほとんど)と,更新可能な資源とがある。水は,雲,雨,氷,海水などと形態を変えつつ地球上で循環しており,その循環過程の途中で河川や湖から取り出され,水資源として人間生活に利用される。この水利用過程では,水は汚染されるだけで,本質的にその形質が変わるわけではなく,再利用が可能である。その意味で水は更新可能な資源ということができるが,通常は循環過程の中の淡水状態で存在する河川や湖の水を取り出し利用するので,地球上の水の総量と各形態の水の循環回数が一定という条件の下では,淡水状で存在する循環量以上に利用することはできない。また汚染がはなはだしければ資源として利用できなくなるので,水資源の利用にも限界がある。
地球上の水は,海水,雲,雨,氷山などの形態をとって存在している。そして凍結,融解,蒸発,降水を繰り返して地球上の水圏内を循環しており,それらの形態の水をすべて合計した地球上の水の総量は約14億km3であるが,淡水として存在するものは総量のわずか2.7%,しかも最も利用しやすい河川や湖沼の表流水は淡水全量の0.35%,13万3000km3にすぎない。したがって氷山,地下水等の開発を進めないかぎり,利用可能水量は地球上に存在する水のごく一部に限られることになる。
河川の表流水や地下水の源となる降水は,地上到達後は一部は地下に浸透して地下水に,一部は河川の流出となって海に達するが,その一部は流出の過程で蒸発散し,雲となり新たな降水の源となる。日本の降水量は年平均約1800mm,水量にして約6600億m3に達するが,その約3分の2の4500億m3が表流水となって水利用の対象となる。日本の降水量は世界の平均よりかなり多く,降雨には恵まれているといえるが,水を資源として利用するときは,降水そのものを利用することはきわめて少なく,通常は河川などの表流水を利用するので,水利用の観点からいえば,降雨が河川に流出する時間分布が重要な意味を持ってくる。それは水需要を充足させるためには,需要の発生に応じて必要な水量が表流水から供給されねばならないからである。したがって日本の河川のように,流域が小さいため日照りが続くとすぐに渇水になる河川は,水利用上からは不都合であり,このためダムを建設し,水資源開発をする必要があるのである。
海水も冷却水などには利用されているが,資源として重要なのは淡水であり,今後も人口増加,生活様式の変革などに伴い淡水使用量は増加することが予想されているので,利根川,淀川などの大河川をはじめとして全国的規模で水資源開発が行われつつある。
執筆者:中沢 弌仁
さまざまな人間活動は,農業用水,工業用水,生活用水として水利用を発展させてきた。たとえば,農業技術の進歩は,用水のコントロールを可能にすることによって農業生産を拡大してきた。また,工業生産の発展は洗浄水や冷却水など水利用の用途を広げてきた。さらに,都市に人口が集中するようになると都市衛生のための上下水道が不可欠になるとともに,近代建築技術の発達は水を利用した空調機器の発達と普及を促してきた。
だが,人間が直接利用することのできる水資源,たとえば,河川表流水などの賦存量には時間的変動がある。したがって,平水年の賦存量を前提として営まれている人間活動は渇水年になると大きな被害を受けることになる。また,工業社会における人間活動の地域的集中は空間的な水資源の不足をも顕在化させることになる。
この時間的・空間的な水資源の不足を補う手段が水資源開発である。日本では,古代から溜池が灌漑期の水田に水を補給する施設として西日本を中心に造られてきた。また,江戸幕政期に築造された見沼代(みぬまだい)用水などの大規模な農業用水路は空間的な水不足を補う施設として新田開発を可能にしたのである。
本格的な水資源開発は河川上流部に巨大な多目的ダムを建設することから始まる。ダム建設は当初,水力発電を目的とするものであったが,アメリカで1928年〈ボールダー峡谷事業法Boulder Canyon Project Act〉以来,多目的ダムの建設が水資源開発の手段として一般化するようになった。この事業はコロラド川にフーバー・ダムを建設し,延長349kmものコロラド川水路を開削し,ロサンゼルスをはじめとする南カリフォルニア諸都市に最大毎秒42.48m3の水を供給する巨大なものであった。またアメリカ南部のテネシー川流域でのTVAによる河川総合開発事業はあまりにも有名である。
日本では,1957年の〈特定多目的ダム法〉,61年の〈水資源開発促進法〉〈水資源開発公団法〉(水資源開発公団),64年の新河川法などの制定を通じて多目的ダムを中心とする水資源開発が本格化する条件がつくられた。
1950年代後半から70年代前半の石油危機まで続いた高度経済成長は,急速な重化学工業化の過程であると同時に,急速な人口の都市集中の過程でもあった。それは一方で,大都市の水不足をもたらし,他方で,工場やビルの過剰な地下水汲上げによる地盤沈下などの地下水障害をもたらした。そこで,都市の水源を地下水から表流水に転換するとともに,都市への水供給を拡大するための水資源開発が積極的に行われるようになった。大都市では,地下水に代わる工業用水源として工業用水道が導入され,そのための水資源開発が新たに必要となった。また重化学工業基地とされた地方の工業拠点でも工業用水道のための水資源開発が必要となった。人口膨張,都市機能の拡大が続いた東京では,その水需要をまかなうため多摩川水系に小河内ダムが世界最大の水道用貯水池として1957年に完成した。しかし,その後オリンピック渇水(1964)に見舞われたように,多摩川水系だけで水需要をまかないきれず,矢木沢ダム,下久保ダム,利根川河口堰,草木ダムなど利根川水系にまで水源を求める広域的な水資源開発が進展している。
しかし,73年秋の石油危機以来,同年に福岡大渇水を経験したこともあって,水節約がとくに大量水使用者を中心に進み,工業用水需要,大都市の水需要は停滞に転じてきた。また,人口流動パターンも地方から大都市への人口集中から大都市周辺,地方都市への人口分散へと変化してきている。他方で,廃水規制や下水道の整備にもかかわらず,水源となる河川や湖沼の汚染は依然として続いている。水源となる湖沼やダム湖における富栄養化,都市河川の有機化学物質による汚染など,解決の容易でない汚染問題をひかえている(〈水汚染〉の項参照)。これからの水資源開発は単に量の確保だけでなく質を含めた水資源の確保が問題となっている。
執筆者:仁連 孝昭
水資源開発は,日本では主として,(1)河川に多目的ダムを建設し,貯水池によって渇水補給を行うというやり方で行われているが,このほかにも,(2)天然湖沼の水位を調節して,ダムによる貯水池と同様の機能を持たせる方法,(3)時期によって流況の異なる二つの河川を水路で結び,相互に余剰流量を随時融通することによって両河川の需要に対し水を安定供給してやる方法なども実施されている。また,(4)海水淡水化,人工降雨など気象制御による方法,(5)乾燥地帯において,貯水池からの蒸発を減少させ,間接的に利用可能水量を増加させる蒸発抑制法,(6)地下の空隙部分を水の貯留蓄積に使い,水を涵養して地下水の利用可能量を増やしたり,未開発の地下水を揚水する方法,(7)廃水の再利用,(8)極地方から乾燥地帯へ氷山を輸送し,融解して使う方法等も水資源開発の手法として考えられる。以上の方法のうち現実に世界の水不足の地域で実施に移されているものも多い。
→水
執筆者:中沢 弌仁
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…(1)自然の状態で,十分に〈濃集〉していること,(2)十分な〈量〉があること,(3)手の届く〈位置〉にあることで,以上の3要素のいずれを欠いていてもそれは資源と呼ぶにふさわしくない。たとえば〈量〉のみに注目をして海水は大きな資源でほとんどあらゆる物質を含んでおり,しかも量も大きく目の前にあるといった単純な海水資源論は,水そのものの塩分などは十分に〈濃集〉されているが,これらの物質以外を抽出するとすれば費用がかかりすぎ現実的でない。かりに海水から金を採るとすれば膨大な海水を化学的に処理しなければならず,現在の技術水準ではとても採算に合わない。…
※「水資源」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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