ドーズ法(読み)どーずほう(英語表記)Dawes Severalty Act

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーズ法」の意味・わかりやすい解説

ドーズ法
どーずほう
Dawes Severalty Act
Allotment Act of 1887

アメリカ先住民(アメリカ・インディアン)に対する自営農地法ホームステッド法)ともいうべき法律。1887年2月8日に制定され、提案者である上院議員H・ドーズにちなんでよばれる。正確には「種々の特別居住区に住むインディアンに単独所有で土地を割り当てること、アメリカ合衆国およびテリトリーの法律の保護をインディアンに広げること、およびその他の目的を規定する法」という。ドーズ法はすべての先住民集団に適用されるのではなく、異なった状況にあった文明化された五部族(チェロキークリーク、チカソー、チョクトー、セミノール)やオーセジ、マイアミおよびサックフォックスなどには適用されなかった。

 ドーズ法は、特別居住区内の土地を、そこに住む先住民に対し、家族の長に160エーカー(一セクションの4分の1。約0.6平方キロメートル)、18歳以上の独身者に80エーカー、18歳未満の孤児に80エーカー、現に居住する18歳未満の者などに40エーカー割り当てる権限大統領に与えること、その土地は合衆国が25年間保管すること、およびかかる先住民に対し合衆国の市民権を与えること、などを規定している。しかし、同法によって先住民に割り当てられた総面積の数倍もの土地が白人に割り当てられた。すべての先住民に合衆国の市民権が与えられたのは、1924年のインディアン市民権法Indian Citizenship Actによってである。

[上田伝明]

『上田伝明著『インディアン憲法崩壊史研究』(1974・日本評論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ドーズ法」の意味・わかりやすい解説

ドーズ法 (ドーズほう)
Dawes Act

アメリカの連邦上院議員ドーズHenry L.Dawesが提案し,1887年2月8日大統領の署名を得て成立したインディアン一般土地割当法General Allotment Actの通称。内容は次の4点に要約できる。(1)保留地の土地を単独保有地としてインディアン個人に割り当てる。(2)割当地は25年間合衆国の信託下で保管される。割当地以外の余剰地は白人入植者に売却・賃貸することができる。(3)割当地所有者は市民になれる。(4)チェロキー族など特定の諸部族にはこの法の規定は及ばない。この法は保留地の部族共有地を廃止して個人私有地にかえ,部族組織と部族文化を解体してインディアンを農民・市民として白人市民社会に同化することを目ざすもので,保留地の土地と資源をねらう諸企業や農民の経済的欲求と,人道主義的改革家の個人主義,進歩主義の哲学とが合致して立法化された。その後の修正立法で割当地の賃貸が容易になり,保留地は急速にインディアンの手を離れた。従来の軍事的征服政策から文化的解体政策への転機を画した点で,合衆国のインディアン政策史上重要な意義をもっている。
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百科事典マイペディア 「ドーズ法」の意味・わかりやすい解説

ドーズ法【ドーズほう】

1887年にアメリカ合衆国で制定された一般土地割当法の通称で,提案者の名ドーズDawesにちなむ。インディアン保留地に住むインディアン個々人に一定の土地を割り当て,それ以外の余剰地を白人に提供することを主な内容とする。保留地の土地共有制を廃止することで従来の〈未開〉な社会構造を解体し,農民化=文明化,ひいては白人社会に同化することをねらったものである。この結果,保留地面積は急激に減少した。しかし結果的に住民の生活は改善されず,固有の文化を否定されたことへの反発も大きく,1934年のインディアン再組織法によってこの政策は撤回された。なお,日本のアイヌ政策の根幹をなす北海道旧土人保護法(1899年制定,1997年廃止)はドーズ法に酷似しており,これを参考にしたとも考えられている。→アメリカ・インディアン
→関連項目アイヌ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドーズ法」の意味・わかりやすい解説

ドーズ法
ドーズほう
Dawes General Allotment Act; Dawes Severalty Act

アメリカインディアンの指定居留地の民族的所有地を解体して個々に個人所有地として割当て,インディアンを独立の自営農民として市民社会に同化させることをねらいとしたアメリカの法令。 1887年2月8日連邦議会で可決され,提案者マサチューセッツ選出連邦上院議員 H.ドーズの名を取ってドーズ法と呼ばれる。この法令により大統領は 64ha (160エーカー) までの民族所有地を個人所有地としてインディアン個々人に付与する権限を与えられ,またその土地は 25年間連邦政府に信託されることが規定された。しかし 87年に 55万 2000km2 (1億 3800万エーカー) あったインディアンの土地は,この法令が破棄された 1934年までの 47年間に,その 60%が彼らの手から離れた。また同期間に割当て地の3分の2は白人に売却された。この法令の施行によって,あるいはこの法令がなくても同じ結果を招いたかもしれないが,インディアンは生活の基盤である土地と生活様式,つまり固有の文化を奪われ,病気と貧困と無気力の生活に追込まれた。アメリカのインディアン政策史上この法令は武力による征服,絶滅政策から文化的な破壊政策への転換点と位置づけることができる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ドーズ法」の解説

ドーズ法(ドーズほう)
Dawes General Allotment Act

アメリカのインディアン保留地内の土地を個々の先住民に私有地として割り当て,余剰地を白人に開放しようとする法律(1887年)。先住民の土地の60%が白人の手に渡り,先住民の社会組織と文化的伝統の崩壊に拍車をかけることになった。

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世界大百科事典(旧版)内のドーズ法の言及

【アメリカ・インディアン】より

…一方,人道主義的改革家は,インディアンの部族組織と部族文化を解体し,彼らを農民・市民として文明化し,白人市民社会に同化させることを目指した。この経済的欲求と文明化のイデオロギーが合致して,1887年に一般土地割当法(ドーズ法)が制定された。それは,保留地の一部をインディアン個人に単純所有地として割り当て,余剰地を白人耕作者に開放することを規定したもので,軍事力による土地奪取から,法による土地奪取への転機を画した。…

※「ドーズ法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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