改訂新版 世界大百科事典 「ナイルサハラ語族」の意味・わかりやすい解説
ナイル・サハラ語族 (ナイルサハラごぞく)
Nilo-Saharan
ニジェール川中流からサハラ南部,さらにスーダンから白ナイル川沿いの東アフリカにまで至る広い地域に分布するアフリカの言語グループ。下位区分には,(1)ニジェール川中流域のソンガイ語,ジェルマ語などのソンガイ語群Songhai,(2)ナイジェリアのボルヌ地方のカヌリ語,サハラのテダ語,ダザ語などの属するサハラ語群Saharan,(3)チャドのワダイ地方のマバ語群Maban,(4)スーダンのダルフール地方のフール語Fur,(5)エチオピア・スーダン国境地帯のコマ語群Koman,(6)シャリ・ナイル諸語Chari-Nileがある。シャリ・ナイルグループは,この語族最大の分枝であり,さらに(a)東スーダン諸語Eastern Sudanic,(b)チャド,中央アフリカ,コンゴ民主共和国からスーダン西部の中央スーダン諸語Central Sudanic,(c)エリトリアのクナマ語群Kunama,(d)スーダン・エチオピア国境のベルタ語群Bertaに細分されている。
この語族の言語はすべて,音の高低によるアクセントをもつ音調言語である。また多くの言語,特に東スーダン諸語では,単数/複数の対立を,t/k(接頭辞あるいは接尾辞)であらわすという特徴をもっている。
ナイル・サハラ語族の伸張は,比較的新しく,西方に向かってアフロ・アジア語族の分布する地域に楔(くさび)状に侵入した。南方に向かっては,バントゥー諸語の分布域に深く食い込み,現在もその伸展が続いている。
執筆者:松下 周二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報