ナツフジ(その他表記)Millettia japonica A.Gray

改訂新版 世界大百科事典 「ナツフジ」の意味・わかりやすい解説

ナツフジ (夏藤)
Millettia japonica A.Gray

小型のフジのようなマメ科のつる性落葉樹で,ときに観賞用として庭園で栽培される。ドヨウフジ土用藤)ともいうが,フジとは別属。茎は右巻きで細い。葉は互生し,羽状複葉で,長さ15~30cm,11~17枚の奇数個の小葉をつける。小葉は卵形か長楕円形で,長さ2~9cm,幅1~2cm,ほとんど無毛。7~8月に葉腋ようえき)から長く伸びて垂れ下がる花穂に,多数蝶形花をつける。和名はこのようすを夏のあるいは土用の藤と見立てたもの。花は黄緑色をおびた白色,長さ約15mm,おしべは10本ある。果実扁平,広線形で,長さ6~9cm,無毛,熟すと左右の2片に割れて種子を飛ばす。種子は5~9個あり,扁平で円形。本州中部以西,四国,九州に分布し,低山地の林のふちや崖地に生育する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナツフジ」の意味・わかりやすい解説

ナツフジ
なつふじ / 夏藤
[学] Wisteria japonica Sieb. et Zucc.
Millettia japonica A.Gray

マメ科(APG分類:マメ科)の落葉藤本(とうほん)(つる植物)。盛夏に花を開くので、ドヨウフジともいう。茎はフジと同じ左巻き(つるが支柱を左上に巻く)で、高さ3メートル以上まで登る。葉は互生し、11~17枚の小葉からなる奇数羽状複葉。小葉は卵形で長さ2.5~4センチメートル、ほとんど毛はない。7~8月、葉腋(ようえき)に長さ10~20センチメートルの花穂を垂れ下げ、緑白色で長さ約1.5センチメートルの蝶形花(ちょうけいか)を多数総状につける。果実は長さ約10センチメートルで、無毛の鞘(さや)になる。山野に生え、中部地方以西の本州から九州、および朝鮮半島南部に分布する。花が淡桃色の品種アケボノナツフジがある。

小林義雄 2019年10月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナツフジ」の意味・わかりやすい解説

ナツフジ(夏藤)
ナツフジ
Millettia japonica

マメ科のつる性の落葉低木。ドヨウフジともいう。山地または低地の林中に他木に巻きついて生え,西日本の照葉樹林のへりなどに多くみられる。葉は互生し,5~7対の小葉から成る奇数羽状複葉で,長さ 30cmに達する。夏,葉腋からフジに似た長さ 10~30cmの細長い総状花序を下垂し,多数の緑白色の蝶形花をつける。花後,長さ6~9cmの莢をつくる。全体としてフジ属 Wisteriaに似ているが,花序が腋生する点などで異なる。

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