ニャット・リン(読み)にゃっとりん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニャット・リン」の意味・わかりやすい解説

ニャット・リン
Nhât Linh

[生]1905
[没]1963
ベトナムの作家。本名 Nguyêu Tuong Tâm。友人カイ・フンらとともにフランス植民政策を筆で批判攻撃するために「自力文団」と呼ばれる作家グループをつくり,新生活運動を推進,貧困にあえぐ農村社会の改善を意図するなど,文学を通じて庶民の教化啓蒙に努めた。やがて文学活動から政治活動へと移行し,第2次世界大戦後,ベトミン連合政府の外相になったが,のち引退して,呉政権の末期に「自由を踏みにじる人々に警告を与える」との遺書を残して服毒自殺した。『断絶』 Doan Tuyêt (1935) ,『白い蝶』 Buom Trang (42) ,カイ・フンとの合作短編集『死なないで』 Anh Phai Sông (32~33) などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニャット・リン」の意味・わかりやすい解説

ニャット・リン
にゃっとりん
(1906―1963)

ベトナムの小説家。漢字名は一霊。本名グエン・トゥォン・タム(阮祥三)。兄弟、友人のカイ・フンら7名と1930年自力文団を創設した中心人物で、当時のベトナム社会を新旧対立の社会ととらえてその矛盾を批判する文学活動を展開。代表作の長編『断絶』(1935)で、愛の純粋性を説き、因襲社会への抵抗を擁護した。そのほか長編に『白い蝶(ちょう)』、『風雨の人生』がある。なおカイ・フンとの合作短編集『あなた生きて!』などもあるが、すべて同じテーマを追求している。のち政治運動に身を投じるが、極端な理想主義偏向のため中途挫折(ざせつ)し、服毒自殺。

[竹内与之助]

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