経済や社会が元の状態に戻らず、まったく新しい状態に変わるという概念。新たな状態そのものをさす場合もある。世界金融危機(恐慌)、パンデミック、戦争・紛争、大規模災害、気候変動など激しい社会変化を経て生じるとされ、「新常態」ともよばれる。リーマン・ショック後の2009年、エコノミストのモハメド・エラリアンMohamed A. El-Erian(1958― )が、従来の景気循環論ではとらえられない時代が到来するとして提唱。2014年に、中国国家主席の習近平(しゅうきんぺい)が10%台の経済成長が望めなくなった中国経済を説明するため使用し、広く世界に普及した。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の世界的流行後、エラリアンが世界経済を「ニューノーマル2.0」と表現したことで、リモートやオンライン処理の普及など、コロナ後の社会のあり方を考えることばとしてふたたび多方面で使われるようになった。
ニューノーマルは、(1)量よりも質を重視する、(2)技術革新などによる構造変化を伴う、(3)環境、安心・安全、多様性、格差是正などを重視する価値観や判断基準に転換する、といった特徴をもつ。ニューノーマルは当初、経済やビジネス分野で使われることばだったが、新型コロナウイルス感染症の流行を経て、政治、生活、労働、教育、医療などを含めた社会分野全般で使われている。日本では、脱炭素・気候変動、少子高齢化・人口減少、働き方改革などのほか、2011年(平成23)の東日本大震災後の社会変化を表す表現としても使われる。
[矢野 武 2022年6月22日]
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