日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニンジンボク」の意味・わかりやすい解説
ニンジンボク
にんじんぼく / 人参木
[学] Vitex negundo L. var. cannabifolia (Sieb. et Zucc.) Hand.-Mazz.
クマツヅラ科(APG分類:シソ科)の落葉低木。中国に広く分布し、日本では庭木として植えられる。高さ3~5メートル、枝は四角形で葉を対生し、葉は掌状複葉。小葉片は5個(ときに3個)で、中央の小葉がもっとも大きく長さ9センチメートル、披針(ひしん)形で先は長くとがる。縁(へり)に鋸歯(きょし)があり、下面には短毛をつける。7~8月になると、淡紫色の小さい唇形花が長さ20センチメートルほどの円錐(えんすい)花序をなして階段状に集まって咲く。4個の雄蕊(ゆうずい)(雄しべ)は花冠から長く出る。果実は径5ミリメートル、倒卵形で黒色。
漢名ではニンジンボクを牡荊(ぼけい)、果実を牡荊子という。牡荊子は、鎮咳(ちんがい)、鎮痛、健胃、止瀉(ししゃ)剤として喘息(ぜんそく)、感冒、胃病、消化不良、腸炎などの治療に用いる。中国では葉、茎、根もほぼ果実と同様に用いる。なお、小葉が全縁であるものをタイワンニンジンボクV. negundo L.とよび、台湾、中国、東南アジア、インド、マダガスカル島、アフリカに分布する。漢名では黄荊(おうけい)といい、前種と同様に用いる。インドでの薬用としての利用もほぼ同様であるが、葉に殺虫作用と抗がん作用があるかどうかが研究されている。
[長沢元夫 2021年9月17日]