ネオ・ダダ(読み)ねおだだ(英語表記)Neo-Dada

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネオ・ダダ」の意味・わかりやすい解説

ネオ・ダダ
ねおだだ
Neo-Dada

新しいダダイズムdadaismの意味。1960年前後にアメリカに現れた日常的なモチーフや卑近物品を素材として作品をつくる傾向を、かつてのダダイズムになぞらえてジャーナリストがつけた通称である。ラウシェンバーグ、ジャスパー・ジョーンズの初期の制作がこの通称の由来であるが、これに加えてジャンク・アート(廃物芸術)のスタンキビッチRichard Stankiewicz(1922―1983)やチェンバレンJohn Chemberlain(1927―2011)もこの風潮のもとに想起される。彼らの制作は、ヨーロッパのヌーボー・レアリスムと軌を一にする傾向をもっている。事実、両者は合同展を催しているし、1961年パリのJ画廊におけるヌーボー・レアリスム展には「ダダの上 40゜」のタイトルがつけられている。かつてのダダが芸術の白紙還元と日常化を要求して破壊と否定の運動を推進したのに対して、ネオ・ダダは現代の都市的現実を情感を交えずに呈示するのを特色としている。しかしその反芸術的な思考は、ポップ・アートからコンセプチュアル・アートに至る1960年代のさまざまな新しい美術思潮に投影している。

[野村太郎]

『ハンス・リヒター著、針生一郎訳『ダダ――芸術と反芸術』(1987・美術出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネオ・ダダ」の意味・わかりやすい解説

ネオダダ
Neo-Dada

第2次世界大戦後のアメリカ美術の動向のうち,J.ジョーンズ,R.ラウシェンバーグらの仕事を一括した呼称。現実の物体に対する関心が顕著であることと,従来絵画の形式からの逸脱という特徴が,戦前ダダを連想させたのでこの呼称が生れた。ジョーンズの旗や標的などの記号の絵画化,ラウシェンバーグのコンバインペインティングは 50年代の抽象表現主義と 60年代のポップ・アートとを橋渡しする役割を果した。彼らの作品には M.デュシャン,J.ケージの思想の影響が色濃くみられる。

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